第37回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会 シンポジウム2 「口腔がん治療における周術期口腔機能管理とは?」 座長総括
2012年4月の診療報酬改定において「周術期口腔機能管理」が歯科診療報酬に新設された. その後の改定時にほとんどの点数が増点されたことや, 適用範囲の拡大, 医科手術点数への加算などが行われたことは, この新しい形の歯科医療への期待の表れであると考えられる. 一方で, 周術期口腔機能管理は, 方法, 適応範囲, 有効性について, いまだに明らかにされておらず, いわゆる「専門家の意見」に準じた口腔管理が行われているのが現状ではないだろうか. また, 多くの施設で口腔管理が行われる様になった中で, 疑問に感じることや誤解と思われることなどが生じてきている. 周術期口腔機能管理が開始されて6年以上...
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| Published in | 日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 31; no. 3; p. 105 |
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| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本口腔腫瘍学会
15.09.2019
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0915-5988 |
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| Summary: | 2012年4月の診療報酬改定において「周術期口腔機能管理」が歯科診療報酬に新設された. その後の改定時にほとんどの点数が増点されたことや, 適用範囲の拡大, 医科手術点数への加算などが行われたことは, この新しい形の歯科医療への期待の表れであると考えられる. 一方で, 周術期口腔機能管理は, 方法, 適応範囲, 有効性について, いまだに明らかにされておらず, いわゆる「専門家の意見」に準じた口腔管理が行われているのが現状ではないだろうか. また, 多くの施設で口腔管理が行われる様になった中で, 疑問に感じることや誤解と思われることなどが生じてきている. 周術期口腔機能管理が開始されて6年以上が経過し, エビデンスの構築に寄与する研究成果が少しずつ蓄積され, 周術期口腔機能管理について科学的根拠を背景に議論をする時期になってきたと思われる. 今回のシンポジウムでは, 口腔がんに関連する有害事象やがん治療における口腔管理について精力的に研究されている演者の方々に, その研究成果をご報告いただき, 口腔に関連する合併症のリスク因子やその管理方法について活発に議論することができた. 九州歯科大学の船原まどか先生には術後感染予防を目的とした周術期口腔機能管理の標準化について唾液中細菌数との関連を中心にご報告いただいた. 神戸大学の西井美佳先生には放射線治療時に問題となる口腔粘膜炎と口腔カンジダ症のリスク因子について多施設共同研究の結果をご報告いただいた. 最後に関西医科大学の兒島由佳先生には放射線性顎骨壊死のリスク因子について新たに得られた知見についてご報告いただいた. 3名のシンポジストの発表から, 周術期口腔機能管理とは単に口腔を清潔に保ったり感染源を除去したりすればよいというものではないことが明らかになった. 一方で, 適切な口腔管理の方法は合併症の種類や管理の目的により異なり, 現状では不十分であることが理解できた. また, がん治療の進歩から合併症が減る反面, 新薬や技術の開発により新たな口腔に関連する合併症に遭遇することは容易に推測できる. これからも周術期口腔機能管理に携わるわれわれが研鑽し研究成果を持ち寄り, その方法や有効性について近い将来再び同じテーマでシンポジウムを企画することができれば座長として大変嬉しく思う. |
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| ISSN: | 0915-5988 |