102. 口腔癌患者に発生した皮膚転移に関する研究

【緒言】口腔癌は, まれに皮膚転移を生じるが出現すると, 患者の予後は著しく不良であるとされる. 今回, われわれは, 皮膚転移を生じた口腔癌の5症例を経験し, 文献的考察を加え, 検討したので報告した. 【対象および方法】1989年4月から1999年3月までの10年間に当科において治療を施行した, 口腔扁平上皮癌患者のうち, 治療後最低1年以上経過を観察しえた128症例を対象とした. 皮膚転移が認められた症例において, 臨床的所見(年齢, 性別, T・N・Stage分類, 放射線治療・化学療法・局所再発・後発リンパ節転移の有無)および病理組織学的所見(分化度, 頸部リンパ節節外浸潤の有無,...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 13; no. 3; pp. 103 - 104
Main Authors 佐藤寿, 小林恒, 八木橋靖子, 福井朗, 木村博人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2001
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ISSN0915-5988

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Summary:【緒言】口腔癌は, まれに皮膚転移を生じるが出現すると, 患者の予後は著しく不良であるとされる. 今回, われわれは, 皮膚転移を生じた口腔癌の5症例を経験し, 文献的考察を加え, 検討したので報告した. 【対象および方法】1989年4月から1999年3月までの10年間に当科において治療を施行した, 口腔扁平上皮癌患者のうち, 治療後最低1年以上経過を観察しえた128症例を対象とした. 皮膚転移が認められた症例において, 臨床的所見(年齢, 性別, T・N・Stage分類, 放射線治療・化学療法・局所再発・後発リンパ節転移の有無)および病理組織学的所見(分化度, 頸部リンパ節節外浸潤の有無, Anneroth分類, YK分類)について検討を行った. 【結果および考察】皮膚転移5症例(平均年齢64. 2歳;男性4例;舌2例・下顎歯肉・口底・頬粘膜各1例;Stage I 1例, Stage IV 4例;局所再発の出現4例;後発リンパ節転移の出現3例;化学療法施行2例;放射線治療施行4例;高分化型4例, 中分化型1例;頸部リンパ節節外浸潤の出現4例;Anneroth分類13-17平均14. 6;YK分類4C全例)は, すべて頸部皮膚(2例は, 顔面にも)に認められ, 初回手術より平均13. 2Mで出現し, 出現後平均2. 4Mで全症例死亡した. 統計学的検討により, 皮膚転移の臨床的危険因子では, N・局所再発・後発リンパ節転移の出現が, 病理組織学的危険因子では, Anneroth分類で13点以上, YK分類で4C・4Dが考えられた. 質問 埼玉がんセ・口外 岡部 貞夫 呈示された「皮膚転移」症例は全て頸部郭清術後のものであり頸部再発とすべきで, 遠隔転移を想定させる皮膚転移とは区別すべきものと考えますがいかがでしょうか. 応答 弘前大・歯口外 佐藤 寿 皮膚転移と頸部再発との区別は難しいのですが, 郭清部以外の頸部皮膚への結節型の出現顔面(口唇)前胸部への出現等, 病理組織学的には, 健康な扁平上皮下に結節型の腫瘍を認めること等により, 皮膚転移と考えました. 質問 日本歯大新潟・2口外 又賀 泉 1. 皮膚転移経路について教えて下さい. 全例頸部郭清症例ですか. 2. このような転移症例に対する治療方法について. とくに患者のQOLに向上出来る方法があったら教えて下さい. 当科では広範な転移のため, 放射線化学療法に温熱治療を加えて試みましたが, 制御出来ませんでしたが, 一時的に腫瘍は縮小しました. 応答 弘前大・歯口外 佐藤 寿 1. 5症例中4症例は, N(+)のため, 初回手術時頸部郭 清施行し, 残りの1症例も後発リンパ節転移をきたしたため, 頸部郭清施行しました. 経路につきましては, 最近血行性といった報告も多い様です. 2. 姑息的治療に滞まり有効な治療は行えませんでした. 外科的切除がQOLを向上したとの報告もあり, 今後検討したいと思います.
ISSN:0915-5988