IK1 (Kir2.1) チャネルの細胞外K+依存性の分子機構

IK1は, 心筋の静止電位をカリウムイオン(K+)の平衡電位(EK)に近い大きな負電位に維持する, 内向き整流性K+電流である. IK1チャネルの透過性(コンダクタンス)は, 活動電位が生じて膜が脱分極すると速やかに失われるが(強い内向き整流性), これは細胞内のポリアミン, なかでもスペルミンがチャネルを電位依存性にブロックすることによる. ポリアミンによるIK1外向き電流の抑制は, 心筋活動電位の特徴である長い脱分極(プラトー相)の主要な形成要因であり, 再分極相ではブロックの解放で生じる外向き電流が再分極を加速する. 高/低カリウム血症では, IK1の二つの特徴的な細胞外K+濃度([K+...

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Published in心電図 Vol. 40; no. 2; pp. 95 - 100
Main Author 柳石原圭子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本不整脈心電学会 07.08.2020
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ISSN0285-1660

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Summary:IK1は, 心筋の静止電位をカリウムイオン(K+)の平衡電位(EK)に近い大きな負電位に維持する, 内向き整流性K+電流である. IK1チャネルの透過性(コンダクタンス)は, 活動電位が生じて膜が脱分極すると速やかに失われるが(強い内向き整流性), これは細胞内のポリアミン, なかでもスペルミンがチャネルを電位依存性にブロックすることによる. ポリアミンによるIK1外向き電流の抑制は, 心筋活動電位の特徴である長い脱分極(プラトー相)の主要な形成要因であり, 再分極相ではブロックの解放で生じる外向き電流が再分極を加速する. 高/低カリウム血症では, IK1の二つの特徴的な細胞外K+濃度([K+])依存性によって, 心筋の静止電位や活動電位持続時間/再分極が変化する. その一つは, 細胞外[K+]が変化するとIK1の電流-電圧関係がEKの変化とともにシフトする, すなわちポリアミンによるブロックが事実上膜電位とEKの電位差で決まるというものである. もう一つは, 開状態のIK1チャネルのコンダクタンスが細胞外[K+](の平方根)に比例するというものであり, 再分極に寄与するIK1外向き電流の振幅は, 細胞内外の[K+]勾配の変化に反した増減を示す. 本稿では, これらのIK1チャネルの性質の分子メカニズムについて, 最新の知見を紹介する.
ISSN:0285-1660