II-12 血管性腰痛の2例-下肢閉塞性動脈硬化症に伴う腰痛の検討

腰下肢痛が主訴の外腸骨動脈の狭窄を主病変とする閉塞性動脈硬化症の患者で, 外腸骨動脈に対する処置により, 下肢痛のみならず腰痛も劇的に改善した2例を経験した. 2例とも脊柱所見に異常はなく, 心理的要因もなかった. 臨床像の特徴は, 1)腰下肢痛は同時に発症したこと, 2)阻血性疼痛である下肢痛よりも腰痛の程度の方が強かったことであった. 矢吹らは, 血管性腰痛の原因として腰部伸筋群の虚血をあげたが, 自験例の主病変は外腸骨動脈で, 腰動脈と正中仙骨動脈の閉塞もなかったため, 腰部伸筋群の虚血を直接的には説明できない. しかし血管造影所見上, 正中仙骨動脈と腸腰動脈の吻合(副行路の形成)を認め...

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Published in日本腰痛学会雑誌 Vol. 8; no. 1; pp. 198 - 199
Main Authors 松平浩, 星和人, 小林篤樹, 星地亜都司, 中村耕三, 山崎隆志, 荒井勲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腰痛学会 2002
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ISSN1345-9074

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Summary:腰下肢痛が主訴の外腸骨動脈の狭窄を主病変とする閉塞性動脈硬化症の患者で, 外腸骨動脈に対する処置により, 下肢痛のみならず腰痛も劇的に改善した2例を経験した. 2例とも脊柱所見に異常はなく, 心理的要因もなかった. 臨床像の特徴は, 1)腰下肢痛は同時に発症したこと, 2)阻血性疼痛である下肢痛よりも腰痛の程度の方が強かったことであった. 矢吹らは, 血管性腰痛の原因として腰部伸筋群の虚血をあげたが, 自験例の主病変は外腸骨動脈で, 腰動脈と正中仙骨動脈の閉塞もなかったため, 腰部伸筋群の虚血を直接的には説明できない. しかし血管造影所見上, 正中仙骨動脈と腸腰動脈の吻合(副行路の形成)を認め, 腰動脈と副行路を形成するとされる上殿動脈と腸骨回旋動脈も発達していたことから, 外腸骨動脈の狭窄に伴い腰動脈, 正中仙骨動脈が下肢への側副血行として機能したため, 相対的に腰部脊柱を構成する組織の虚血が潜在していた可能性があると考えた.
ISSN:1345-9074