1 突然激痛を生じた, 坐骨神経のancient schwannomaの1例

67歳女性, 主訴は右殿部, 下肢痛. 10年程前より右下腿痛あり. 朝起きたら特に誘引なく, 右下腿痛の増強あり. 初診時, 右殿部に3cm大弾性硬の腫瘤があり, 右下肢に放散する圧痛を認めた. 坐骨神経由来の神経原性腫瘍を疑い, 核出術を行った. 腫瘍はancient schwannomaであった. 術後は夜間痛, 歩行時痛消失した. 神経鞘腫はSchwann細胞由来の単発性, 被膜性の良性腫瘍で頭頸部や四肢の表面, あるいは深部の神経にみられる腫瘍である. 坐骨神経発生は比較的少ない. Ancient schwanomaはschwanomaのタイプの1つで長い経過を経て変性したものと考え...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 58; no. 3; p. 125
Main Authors 松葉友幸, 野村隆洋, 内室涼, 植村一貴, 伊東秀博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2010
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ISSN0037-3826

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Summary:67歳女性, 主訴は右殿部, 下肢痛. 10年程前より右下腿痛あり. 朝起きたら特に誘引なく, 右下腿痛の増強あり. 初診時, 右殿部に3cm大弾性硬の腫瘤があり, 右下肢に放散する圧痛を認めた. 坐骨神経由来の神経原性腫瘍を疑い, 核出術を行った. 腫瘍はancient schwannomaであった. 術後は夜間痛, 歩行時痛消失した. 神経鞘腫はSchwann細胞由来の単発性, 被膜性の良性腫瘍で頭頸部や四肢の表面, あるいは深部の神経にみられる腫瘍である. 坐骨神経発生は比較的少ない. Ancient schwanomaはschwanomaのタイプの1つで長い経過を経て変性したものと考えられている. その特徴は脈管周囲の硝子化, 石灰化, 嚢胞性壊死, 細胞の充実性成分の多いAntoniAの比率の低下がある. 本症例は診断確定までに10年かかっており, 変性した組織像であった. 本例で突然激痛を生じた理由は腫瘍内出血であると推測する. 組織内における壁の薄い異常血管の増生と, 腫瘍の成長により支持性を失い破綻することが出血の原因と考えられた.
ISSN:0037-3826