5. 急性膵炎後の巨大仮性膵嚢胞により生じた胃静脈瘤に対し, 部分脾動脈塞栓術を施行した1例

【症例】43歳, 男性. 【現病歴】平成14年に膵炎にて他院に入院歴あり. 平成17年8月, 重症アルコール性膵炎にて当院当科に入院し, 保存的治療により改善し, 同年9月に退院した. 平成18年1月, 2月にも膵炎の増悪により当院当科で入院治療を受けている. 平成18年1月の腹部CTでは膵頭部~尾部にかけて巨大仮性膵嚢胞を認めた. 2月の退院以降は外来にて経過観察されていたが, 徐々に貧血が進行していた. 同年7月4日上部消化管内視鏡検査(GIF)にて噴門直下より体部大弯にかけて胃静脈瘤(F3, RC陽性)をみとめた. 入院加療の予定となったが, 翌5日午後仕事中にめまいが出現し, 当院救急...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 58; no. 2; pp. 270 - 271
Main Authors 星野崇, 伊島正志, 竝川昌司, 多賀谷健, 飯塚賢一, 廣川朋之, 押本浩一, 片貝堅志, 松本純一, 荒井泰道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2008
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ISSN1343-2826

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Summary:【症例】43歳, 男性. 【現病歴】平成14年に膵炎にて他院に入院歴あり. 平成17年8月, 重症アルコール性膵炎にて当院当科に入院し, 保存的治療により改善し, 同年9月に退院した. 平成18年1月, 2月にも膵炎の増悪により当院当科で入院治療を受けている. 平成18年1月の腹部CTでは膵頭部~尾部にかけて巨大仮性膵嚢胞を認めた. 2月の退院以降は外来にて経過観察されていたが, 徐々に貧血が進行していた. 同年7月4日上部消化管内視鏡検査(GIF)にて噴門直下より体部大弯にかけて胃静脈瘤(F3, RC陽性)をみとめた. 入院加療の予定となったが, 翌5日午後仕事中にめまいが出現し, 当院救急外来へ搬送された. 【経過】緊急GIFにて活動性の出血なく, 腹部造影CTにて巨大膵嚢胞内に高吸収領域を認めた. 膵嚢胞内への出血が疑われ, 緊急腹部血管造影を施行したが, 嚢胞内への明らかな出血はみられなかった. また, 脾静脈は同定されなかった. その後, 同月10日に膵炎の増悪あり, 再度絶食, 輸液, メシル酸ガベキサート, ウリナスタチン等にて治療を行った. 内科的に膵炎や胃静脈瘤のコントロールは困難と考え, 当院外科にて, 同年8月15日手術を施行. しかし, 高度の癒着の為, 脾臓摘出は不可であり, 膵嚢胞内より胃を介してTチューブを留置し, 終了となった. 同月23日貧血の進行あり, GIFにて胃静脈瘤からの出血を認め, 緊急部分脾動脈塞栓術を施行した. その後は, 貧血の進行なく, CT上胃静脈瘤, 仮性膵嚢胞の改善を認め, 同年9月9日退院となった. 現在も当院外来にて経過観察されており, 胃静脈瘤からの出血なく経過している. 【結語】急性膵炎後の巨大仮性膵嚢胞により生じた胃静脈瘤からの出血に対し, 部分脾動脈塞栓術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1343-2826