IV-4 相談から見た「成人した子と親の関係」

[はじめに] 当センターに寄せられた相談の集計から, 今回は標記の問題を検討する. [対象と方法] 平成10年度当センターで受けた電話相談5213件のうち(1)成人した子に関する相談223件と(2)親に関する相談156件を対象に, 相談票を基に内容を分析し, 平成元年度3250件中の(1)189件(2)62件と比較した. [結果と考察] 成人した子に関する相談を, (1)結婚している子の夫婦関係, (2)未婚の子の異性問題, (3)親子の価値観の違い対立, (4)子が社会に不適応, (5)その他, に分類した. その結果, (2)未婚の子の異性問題は元年度と10年度では19%から9.9%と半減...

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Published inこころの健康 Vol. 15; no. 1; pp. 86 - 87
Main Authors 入江祐子, 牧谷孝子, 善養寺圭子, 幸村秀子, 荒島佐恵子, 村田忠良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本精神衛生学会 2000
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ISSN0912-6945

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Summary:[はじめに] 当センターに寄せられた相談の集計から, 今回は標記の問題を検討する. [対象と方法] 平成10年度当センターで受けた電話相談5213件のうち(1)成人した子に関する相談223件と(2)親に関する相談156件を対象に, 相談票を基に内容を分析し, 平成元年度3250件中の(1)189件(2)62件と比較した. [結果と考察] 成人した子に関する相談を, (1)結婚している子の夫婦関係, (2)未婚の子の異性問題, (3)親子の価値観の違い対立, (4)子が社会に不適応, (5)その他, に分類した. その結果, (2)未婚の子の異性問題は元年度と10年度では19%から9.9%と半減している. 元年度では親は子の性意識の変化に悩み, 相談をしてきたが, 10年度では, 戸惑いながらも受け入れている. また, 10年前とは親の世代が入れ替わったこともあり, 性に関する意識の変化が親の側にもみられ, 相談数の半減となったと考える. (4)子が社会に不適応という問題が, 元年度の17%から10年度32%と, ほぼ倍増している. 大学を出たが仕事に就かずに家にいるとか, ギャンブルなどで借金をして親が後始末をする等, 社会人として自立できずにいる子が増え, 親からの相談の増加となった. これを支えているのは, 親の経済力であり, この事からは子の親への依存がうかがわれる. 成人した子から親に関する相談を(6)親に関する心配事や悩みと(7)親との関係とに分類すると,(7)が元年度23%に対し10年度66%と約3倍の増加となっている. 親との関係や育てられ方に, 今の生きづらさや, 夫との関係, 子育ての困難さの原因があると考えている. [まとめ] 子に関する相談からは, 子の親への依存が増していることが窺える. 親に関する相談は, 自分の生きにくさの原因を親に求める依存とも考えられるが, それは自分自身の生き方を模索する自立への兆しとも受け取れる. 今後とも検討を続けたい.
ISSN:0912-6945