熱ショック蛋白質誘導剤(ゲラニルゲラニルアセトン)を用いた老人性難聴モデルマウスの難聴進行の抑制

老人性難聴とは老化に伴う進行的不可逆的な感音難聴であり, 聴力の損失は著しくQOLを低下させるが今だ治療法は確立されていない. 我々は熱ショック応答に着目した. この応答はすべての生物が共有するストレス応答で, 細胞保護のメカニズムは多岐にわたる. 近年この応答を増強することにより難治性神経変性疾患に対する効果が報告されている. 今回老人性難聴モデルを用い, 蝸牛内の熱ショック蛋白質(Hsp)の発現を評価した. さらに熱ショック応答誘導剤を投与し進行性難聴への保護効果の検討もあわせて行った. 動物にはDBA/2Jを用いた. 加齢により蝸牛有毛細胞, ラセン神経節細胞の減少とともにHspは減少傾...

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Published in山口医学 Vol. 59; no. 3; p. 139
Main Author 御厨剛史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
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ISSN0513-1731

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Summary:老人性難聴とは老化に伴う進行的不可逆的な感音難聴であり, 聴力の損失は著しくQOLを低下させるが今だ治療法は確立されていない. 我々は熱ショック応答に着目した. この応答はすべての生物が共有するストレス応答で, 細胞保護のメカニズムは多岐にわたる. 近年この応答を増強することにより難治性神経変性疾患に対する効果が報告されている. 今回老人性難聴モデルを用い, 蝸牛内の熱ショック蛋白質(Hsp)の発現を評価した. さらに熱ショック応答誘導剤を投与し進行性難聴への保護効果の検討もあわせて行った. 動物にはDBA/2Jを用いた. 加齢により蝸牛有毛細胞, ラセン神経節細胞の減少とともにHspは減少傾向を示した. 誘導剤投与群ではHsp70が内・外有毛細胞に高発現し, 他の細胞にも発現を認めた. さらに難聴進行と有毛細胞死の抑制効果も認められた. 熱ショック応答増強が加齢による進行性難聴に対して保護的に働くことが示唆された.
ISSN:0513-1731