失語症の認知神経心理学的評価法
認知神経心理学的アプローチは, 英語圏において, 失語症の言語機能理解, および, 言語処理過程のさまざまなレベルの障害に対する治療法の開発に貢献している. これは, 失語症者の損傷された情報処理過程と正常に働いている過程の両方を検出する評価法(例:PALPA, 1992)が確立されたことによる. 言語治療を実施する際, 残存する正常な処理能力について把握することは, 患者の内に保たれている能力を利用する治療計画を立てる上で欠かすことができない. 私たち(上智大学大学院言語障害研究コースのスタッフ他)は, 英国New castle大学の研究者(David Howardら)とともに, 日本語版の...
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          | Published in | 聴能言語学研究 Vol. 19; no. 3; p. 179 | 
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| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本聴能言語学会
    
        2002
     | 
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| ISSN | 0912-8204 | 
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| Summary: | 認知神経心理学的アプローチは, 英語圏において, 失語症の言語機能理解, および, 言語処理過程のさまざまなレベルの障害に対する治療法の開発に貢献している. これは, 失語症者の損傷された情報処理過程と正常に働いている過程の両方を検出する評価法(例:PALPA, 1992)が確立されたことによる. 言語治療を実施する際, 残存する正常な処理能力について把握することは, 患者の内に保たれている能力を利用する治療計画を立てる上で欠かすことができない. 私たち(上智大学大学院言語障害研究コースのスタッフ他)は, 英国New castle大学の研究者(David Howardら)とともに, 日本語版の認知神経心理学的評価法(仮称, SALA失語症検査:Sophia Analysis of Language in Aphasia)の開発を進めてきた. その目的は, (1)日本語話者の失語症者の損傷された言語処理過程と正常に働いている過程の双方について明らかにできる評価法を開発すること, (2)評価結果が治療法の選択や治療計画に反映されるような臨床上有用な評価法を作成することであった. この評価法では, 頻度, 親密度, 心像性, 単語の長さなどの言語心理学的な変数が患者の成績に及ぼす影響について明らかにすることができ, さらに, どのような障害が原因となっているかについて仮説を立てることができると考えている. SALA失語症検査は40のテストから成っている. AC1-9が聴覚的理解, VC10-19が視覚的理解, PR20-28が産生(口頭書字), R29-33が復唱, OR34-37が音読, D38-40が書取のテストである. この中には, 単語レベルのテストのほかに, 文の理解産生, 非実在語のテスト(ミニマルペアの弁別, 復唱, 音読, 書取), 日本語特有の助数詞に関するテスト, 数詞の把持力に関するテスト等も含まれている. さらに, テストで用いられている単語は, 音韻, 正書法等の要素についても, その影響が計れるように構成されている. 今回の力レントスピーチにおいて, (1)SALAが依拠している言語処理モデル, (2)SALAの各テストの具体的な内容, (3)マニュアルの概要, (4)各テストにおける健常者データ, (5)各テストにおける失語症患者データ等について説明した. | 
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| ISSN: | 0912-8204 |