B-7:発達援助

本群では, さまざまな臨床現場における発達援助の方法についての報告がなされた. 演題B-7-1(赤尾ら)は療育の場で食事とコミュニケーションについての援助を行うなかで, 母親指導が觚の思うようには進まなかった事例を報告した. 母子を注意深く観察し母親の悩みを聞くことにより, 日常生活での母親の負担への配慮が欠けていたことに気づき, 援助方法を見直したとのことであった. 北野(静岡県立こども病院)は, 演者がこのような経過をたどれたのにはスーパーバイザーの相談助言が必要だが, 1人職場で困難なこともあるのではないかと質問した. これに対し, 演者自身は地域の勉強会に積極的に参加してスーパーバイズ...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 23; no. 3; pp. 254 - 255
Main Author 峪道代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 2006
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ISSN1347-8451

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Summary:本群では, さまざまな臨床現場における発達援助の方法についての報告がなされた. 演題B-7-1(赤尾ら)は療育の場で食事とコミュニケーションについての援助を行うなかで, 母親指導が觚の思うようには進まなかった事例を報告した. 母子を注意深く観察し母親の悩みを聞くことにより, 日常生活での母親の負担への配慮が欠けていたことに気づき, 援助方法を見直したとのことであった. 北野(静岡県立こども病院)は, 演者がこのような経過をたどれたのにはスーパーバイザーの相談助言が必要だが, 1人職場で困難なこともあるのではないかと質問した. これに対し, 演者自身は地域の勉強会に積極的に参加してスーパーバイズを受ける機会を作っていると答えた. 畦上(国際医療福祉大)は, 母親との情報交換に日誌などを使っているかと質問した. 演者は, 情報のやりとりは保育中の母親分離の時間を利用しているが, 日誌の利用も参考にしたいと答えた. 演題B-7-2(村松)は乳幼児健診後のフォロー事業である「要経過観察教室」に保健師, 心理士とともにSTとしての関わりについて報告した. 1歳半健診後のコミュニケーション支援には, ことばだけでなく予防的観点でこころを育てる支援が必要と述べた. 畦上(国際医療福祉大)は, コミュニケーションを育むためには生活面全般を支援する必要があると思うが, 生活リズムや食事面などについて具体的援助をしているか質問した. 演者は, ことば以外を主訴とする相談には「ことばと育児の相談」を保健師, 心理士とともに受ける. スタッフと母親らとの話し合いの場で「食べない」, 「落ち着かない」などの相談に具体的に助言していると答えた. 座長から, 1歳半健診での「要観察」は早すぎるとの批判も一般にはあるが, 教室への参加をどのように勧めているのかを聞いた. 演者は, 教室ではトレーニング色を薄め遊び中心の場にしているため, 母親同士が「ことばが気になるならドレミ(教室の名称)へ」と紹介し合うような敷居の低いものになっていると応じた. 演題B-7-3(青木ら)は大学附属歯科診療所のクリニックで, 学齢期に入ってから読み書きを主訴に来室した7名の概要を報告した. 読み書きに問題があっても, その背景, あるいは併発する問題はさまざまであることを念頭において支援法を考える必要があると述べた. 飯高(上智大)は音韻意識について調査しているかを質問し, 逆唱, 削除問題が読み能力と関連があるとの自験例での知見を述べた. これに対し演者は, 音韻意識の問題でつまずくものや軽度の知的遅れを示すものでも, 1年生では操作が難しいが, 時期が来るとできるようになるものがあったと答えた. 演題B-7-4(中村ら)は, 言語聴覚士養成課程の大学生が, 就学前にHFPDDと診断された小学1年生1名が在籍する通常学級の中に, 観察や遊びにボランティアとして参加した経緯を報告した. 当該児童以外にも問題をもつ児童が数名おり, 適切な支援を行うために学生ボランティアの活用に有用性があることを述べた. 石田(北里大)は, 学校にボランティアとして入ることができたきっかけについて尋ねた. 演者は, 当該校の校長が現場の混乱をよく理解していたため受け入れてくれたが, 現場(教師)は困惑していたと答えた. また目立つような行動をしない, などいくつかの制限もあった, とのことであった. 演題B-7-5(久保田ら)は, 保育園5歳児に対し障害者に遭遇した場面3種類の図版を見せ, 社会的不利な状況への気づき, 遭遇している幼児がどのようなことを考えているかを調査し, 障害理解の発達段階(徳田, 2005)にあてはめて検討した. その結果, 対象児はそれぞれの障害理解の発達段階に達していたが, 実際の接触経験や周囲の大人との話し合いで, 理解を深める必要があると述べた. 座長から, 今回の対象図版に示された障害は, 白杖, 車椅子など目で見てわかりやすいものであったが, 今後コミュニケーション障害や知的障害など見えにくい障害を対象として研究する予定はあるかを尋ねた. 演者は, いけないとされている行動と自閉症児の行動のちがいを幼児は理解できるのか, という問題意識が本研究のきっかけであったので機会があれば取組みたいと答えた. この群は, 言語臨床家が福祉, 保健, 医療, 教育など多様な領域で他職種と連携した仕事をする機会が増えていることを示している. 久保田らの演題は, それら領域に加え, あえて言うなら「社会」という, より広い領域での言語臨床家の役割を示すものと思われた. 今後も, 他職種と連携した臨床や研究を, 各専門職が共同で発表されることを期待したい.
ISSN:1347-8451