特集 〔慢性肝炎のトピックス~奈良宣言2023を踏まえて~ (1)〕 巻頭言

2023年の日本肝臓学会総会においてALT値が30を超えていた場合, かかりつけ医等を受診することを勧める, という奈良宣言が発出されました. かかりつけ医で精査を受け, 必要と判断されれば, さらに消化器肝臓内科におけるより詳しい検査を受けることで, 肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的としています. 近年, 肝臓病でも頻度が高かったウイルス性肝疾患の治療方法は進歩しております. 一方で最近, 特に生活習慣病を基盤とするいわゆる脂肪性肝疾患 (MASLD) やアルコール性肝疾患 (ALD) などが進行して肝硬変や肝臓がんに至ることも増えています. 本シリーズでは慢性疾患のトピックスに...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 21; no. 3; p. 192
Main Author 厚川正則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 01.08.2025
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ISSN1349-8975

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Summary:2023年の日本肝臓学会総会においてALT値が30を超えていた場合, かかりつけ医等を受診することを勧める, という奈良宣言が発出されました. かかりつけ医で精査を受け, 必要と判断されれば, さらに消化器肝臓内科におけるより詳しい検査を受けることで, 肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的としています. 近年, 肝臓病でも頻度が高かったウイルス性肝疾患の治療方法は進歩しております. 一方で最近, 特に生活習慣病を基盤とするいわゆる脂肪性肝疾患 (MASLD) やアルコール性肝疾患 (ALD) などが進行して肝硬変や肝臓がんに至ることも増えています. 本シリーズでは慢性疾患のトピックスについて国内の最先端の知識を有するリーダーの先生に執筆いただき慢性肝疾患に関する情報を共有することを目的としました. 虎の門病院の保坂先生と神戸大学の多田先生には本邦でも罹患患者の多いB型ならびにC型ウイルス性肝疾患について, 世界や本邦の疫学, 最新の治療, そしてこれらの疾患の治療後の転帰などについて詳細に執筆いただきました. また順天堂大学の今先生と日本医科大学の新井先生には近年増加傾向のMASLDやALDについて, 最新の診断基準の変遷や今後の展望, 特に新規治療薬の未来について執筆いただきました. 山口大学の高見先生には近年の肝硬変に関連する様々な合併症の診断ならびに治療を主に詳細な解説をいただきました. 日本医科大学の清水先生には門脈圧亢進症の概念ならびに治療として, 日本医科大学の強みである内科・外科・放射線科と協力した集学的な治療について執筆いただきました. そして愛媛県立中央病院の平岡先生には, 近年目覚ましい進歩を遂げた肝細胞癌の治療戦略について自験例も交えてご紹介いただきました. 非常にわかりやすい解説となっておりますので, ぜひ肝臓専門医だけでなく非肝臓専門医の先生がたにも一読いただき最新の肝疾患の実情について理解を深めていただけましたら幸いです. 最後に大変多忙な中, 素晴らしい原稿をいただきました執筆者の先生がたに深謝いたします.
ISSN:1349-8975