原発性肺腺癌と扁平上皮癌における肺胞毛細血管の腫瘍血管への機能転換

原発性肺腺癌(ADC)と扁平上皮癌(SCC)における肺胞毛細血管の動態を比較検討するため, ADC 10例, SCC 11例の肺葉切除組織を用い, 免疫酵素抗体法, 免疫蛍光抗体二重染色法, TdT-mediated dUTP Nick-End Labeling法を行った. また, 同組織由来のRNAを採取しRT-PCR法にて肺胞領域に発現するVEGF121, VEGF165, VEGF189, VEGF206とその受容体VEGFR-1, VEGFR-2のmRNAを検索した. 免疫染色の結果, ADCでは腫瘍細胞は既存の肺胞上皮を置換するように進展増生し, 肺胞毛細血管内皮の細胞膜のTM発現性...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 3; no. 4; p. 204
Main Authors 森下千瑞子, 金恩京, 菊池真理, 枝川聖子, 藤原正和, 大秋美治, ガジザデモハマッド, 武村民子, 川並汪一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2007
Online AccessGet full text
ISSN1349-8975

Cover

More Information
Summary:原発性肺腺癌(ADC)と扁平上皮癌(SCC)における肺胞毛細血管の動態を比較検討するため, ADC 10例, SCC 11例の肺葉切除組織を用い, 免疫酵素抗体法, 免疫蛍光抗体二重染色法, TdT-mediated dUTP Nick-End Labeling法を行った. また, 同組織由来のRNAを採取しRT-PCR法にて肺胞領域に発現するVEGF121, VEGF165, VEGF189, VEGF206とその受容体VEGFR-1, VEGFR-2のmRNAを検索した. 免疫染色の結果, ADCでは腫瘍細胞は既存の肺胞上皮を置換するように進展増生し, 肺胞毛細血管内皮の細胞膜のTM発現性を細胞単位で失い, 細胞質がvWFの発現性を獲得した. SCCの腫瘍細胞は肺胞腔内で膨らむように増生し, 増生した腫瘍細胞はしばしば中心壊死を示し, 血管内皮のCD31, TM, vWFの反応性は不規則に消失した. 内皮細胞におけるアポトーシスは, ADCの境界領域が腫瘍深部に比して有意に多かったが, SCCでは有意差を認めなかった. RT-PCRの結果では, ADCとSCC間でVEGF isoform mRNA, VEGFR mRNAに有意差を認めなかった. 以上, ADCにおいては血管新生が盛んである一方, SCCで内皮細胞の変性・消失が目立つ理由をVEGFのみでは説明できず, たとえばSCCにおける腫瘍細胞による物理的な圧迫が在来の血管の消失を促すことなどが想定された.
ISSN:1349-8975