17)腎糸球体疾患に対する免疫抑制薬の効果:シクロスポリンAとデオキシスパーガリンに関して

目的:難治性ネフローゼ症候群に対する免疫抑制薬の有効性が報告されているが, 今回, 我々は慢性糸球体腎炎およびループス腎炎の患者に2種類の免疫抑制薬(1)シクロスポリンA(CyA), (2)デオキシスパーガリン(DSG)の投与を行い, その効果について検討した. 対象と方法:(1)対象は蛋白尿を有する慢性糸球体腎炎7名, ループス腎炎3名であり, CyAは3mg/kg/日を連日投与し, 6カ月以上経過を観察した. (2)対象はネフローゼ症候群を呈する慢性糸球体腎炎7名, ループス腎炎2名であり, DSGは3mg~5mg/kg/日を点滴静注にて5日間投与し, 尿蛋白減少効果などについて検討した....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 65; no. 2; p. 186
Main Authors 松信精一, 飯野靖彦, 王恒惟, 鎌野千佐子, 武井寛之, 森貴博, 青木宏, 大沢弘和, 橋本和政, 清水光義, 大薗英一, 河辺満彦, 赫彰郎, 柏木哲也, 中村正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 1998
Online AccessGet full text
ISSN1345-4676

Cover

More Information
Summary:目的:難治性ネフローゼ症候群に対する免疫抑制薬の有効性が報告されているが, 今回, 我々は慢性糸球体腎炎およびループス腎炎の患者に2種類の免疫抑制薬(1)シクロスポリンA(CyA), (2)デオキシスパーガリン(DSG)の投与を行い, その効果について検討した. 対象と方法:(1)対象は蛋白尿を有する慢性糸球体腎炎7名, ループス腎炎3名であり, CyAは3mg/kg/日を連日投与し, 6カ月以上経過を観察した. (2)対象はネフローゼ症候群を呈する慢性糸球体腎炎7名, ループス腎炎2名であり, DSGは3mg~5mg/kg/日を点滴静注にて5日間投与し, 尿蛋白減少効果などについて検討した. 結果:(1)CyA投与によって10名中8名の患者において尿蛋白の減少効果を認めた. しかし, 内3名にCyA減量または中止後に尿蛋白の増加傾向を認めている. (2)DSG投与後, 2名の患者(IgA腎症, ループス腎炎)において著明な蛋白尿減少効果を認めている. 副作用としては一過性の白血球減少, 血小板減少, 貧血を認めた. 考察:1)CyAはすでにステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に適応となっており, その有効性は確立しているが, CyA減量中止時の再燃の問題や長期投与時の腎への影響など今後の検討が必要と思われる. 2)DSGの今回の治験では, その有効率は低かったものの, 2例に有効であった. 今後, このような薬剤の使用が可能となれば, 難治性ネフローゼ症候群に対して治療の選択肢が増えることが期待される.
ISSN:1345-4676