歯槽骨吸収が高度に進行した成人性歯周炎患者に対して骨増生術を併用した骨接合型インプラントを利用して歯周治療を行った症例
歯周病によって歯を喪失した場合, 歯周組織の破壊も高度に進行している. そのような患者に対する咬合機能の回復には骨接合型インプラント治療が第一選択になるが, 理想的な結果を得るためには骨組織の増生術が不可欠である. 本報告では, 全顎的に歯周組織の破壊が重度に進行し, 臼歯部の喪失により咬合機能が低下した成人性歯周炎患者に対して, サイナスリフト, ソケットリフトおよびGBR法による骨増生術を併用した骨接合型インプラント治療を行い, 良好な予後を得ている症例の治療経過を紹介する. 2. 初診 患者:43歳女性. 初診日:平成11年8月7日. 主訴:下顎前歯部歯肉の腫脹. 現病歴:約2週間前から...
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          | Published in | 日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-2; p. 180 | 
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| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本歯周病学会
    
        2003
     | 
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0385-0110 | 
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| Summary: | 歯周病によって歯を喪失した場合, 歯周組織の破壊も高度に進行している. そのような患者に対する咬合機能の回復には骨接合型インプラント治療が第一選択になるが, 理想的な結果を得るためには骨組織の増生術が不可欠である. 本報告では, 全顎的に歯周組織の破壊が重度に進行し, 臼歯部の喪失により咬合機能が低下した成人性歯周炎患者に対して, サイナスリフト, ソケットリフトおよびGBR法による骨増生術を併用した骨接合型インプラント治療を行い, 良好な予後を得ている症例の治療経過を紹介する. 2. 初診 患者:43歳女性. 初診日:平成11年8月7日. 主訴:下顎前歯部歯肉の腫脹. 現病歴:約2週間前から1, 1部が動揺し, 歯肉の腫脹を認め近医を受診したところ抜歯を勧められたが納得できず, 精査および加療を希望して明海大学病院歯周病科を受診した. 既往歴および家族歴:歯周病のリスク因子と考えられる事項なし3. 診査, 検査所見1)口腔内所見:初診時の口腔清掃状態は不良で, PCRは55%であった. 全顎的に歯肉の発赤および腫脹が認められた. 5mm以上のプロービング深さを示す部位が多かった. 臼歯部咬合は崩壊しており, 下顎が前方位に移動して咬合していた. 2)X線所見:多数歯に垂直性骨吸収像が認められ, 特に76, 7, 71, 17の骨欠損が重度であった. 4. 診断 全顎的に歯周組織の破壊が進行している成人性歯周炎低いデンタルIQおよび外傷性咬合がリスク因子5. 治療計画(1)患者教育, (2)感染源除去, (3)歯周組織の可及的な再生, (4)骨増生術を併用した骨接合型インプラントによる咬合機能の回復および残存歯の保護6. 治療経過1)歯周基本治療 プラークコントロール, スケーリング, ルートプレーニング, 暫間固定(5~5, 3~3), MTM(76)咬合調整, バイトプレート抜歯(57, 7, 7)暫間義歯(54, 4~7, 76, 67)2)再評価 インプラントおよび歯周外科のための精査3)歯周外科 フラップ手術:3~5, 76(エムドゲイン), サイナスリフト:4~7, インプラント埋入手術:76, 4~6, 67(GBR併用), 5, (ソケットリフトおよびGBR法併用), 遊離歯肉移植術:54, 674)最終補綴 硬質レジン前装連結冠:5, 4~6, 76, 677. 考察, まとめ 本症例では, 臼歯部の咬合が崩壊していたにもかかわらず, 長期に亘り適切な治療を受けていないため, 多数歯を喪失し, 下顎前歯部歯槽骨も高度に破壊されていた. 患者のデンタルIQを高めるためにモチベーションを行った後は, 口腔清掃に非常に熱心にとり組んでくれた. 治療に対する歯周組織の応答性に問題はなかった. 暫間冠を調整し, 臼歯部でバーティカル, ストップを付与した後に最終補綴を行った. インプラント治療のリスクは特に認めておらず, SPTを行うことで良好な予後を維持できると考えている. | 
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| ISSN: | 0385-0110 |