IL-1はMAP kinases-AP-1カスケードとIKK-NF-κBカスケードを介してヒト歯周組織間葉系細胞の各種炎症性因子産生を促進する

【目的】主要な炎症性サイトカインであるインターロイキン-1(IL-1)は歯周病局所における炎症反応や免疫応答において重要な役割を演じている. そこで, IL-1の細胞内シグナル伝達機構を明確にすることは, このシグナル伝達経路をブロックすることによりIL-1の作用を抑制する新規歯周病治療薬の開発において必須であると考えられる. 一方近年, IL-1による各種炎症性因子の発現促進にはactivating protein-1(AP-1)とnuclear facter-κB(M-κB)の2つの転写因子の活性化が関与していることや, IL-1受容体からこれらの転写因子の活性化に至る細胞内シグナル伝達経...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-1; p. 137
Main Authors 木田芳宏, 小林誠, 鈴木崇夫, 長谷川紘司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 2003
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ISSN0385-0110

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Summary:【目的】主要な炎症性サイトカインであるインターロイキン-1(IL-1)は歯周病局所における炎症反応や免疫応答において重要な役割を演じている. そこで, IL-1の細胞内シグナル伝達機構を明確にすることは, このシグナル伝達経路をブロックすることによりIL-1の作用を抑制する新規歯周病治療薬の開発において必須であると考えられる. 一方近年, IL-1による各種炎症性因子の発現促進にはactivating protein-1(AP-1)とnuclear facter-κB(M-κB)の2つの転写因子の活性化が関与していることや, IL-1受容体からこれらの転写因子の活性化に至る細胞内シグナル伝達経路が次第に明らかにされてきた. そこで我々は, IL-1シグナル伝達阻害薬による歯周炎進行抑制の可能性を検討する目的で, ヒト歯周組織間葉系細胞であるヒト歯肉線維芽細胞(HGF)とヒト歯根膜細胞(HPLC)におけるIL-1β依存的な各種炎症性因子[IL-6, IL-8, matrix metalloproteinase-1(MMP-1), prostaglandin E2(PGE2)]の離促進におけるMAP kinase-AP-1カスケードとIKK-NF-κBカスケードの関与について検討した. 【材料と方法】実験にはHGF, HPLC各々3-5代目を使用した. HGFとHPLCをIL-1βで刺激後, MAP kinase(ERK1/2, p38, JNK1/2), IKKα/β, I-κBαの活性化をWeatern blot法にて, c-fosとc-junのmRNA発現をNorthern blot法にて, AP-1とNF-κBのDNA結合能をGel sift法にて, IL-6, IL-8, MMP-1, PGE2産生をELISA法にて検討した. また, HGFとHPLCをERK阻害薬(PD098059, UO120), p38阻害薬(SB203580), JNK阻害薬(SP600125), AP-1とNF-κBの活性化阻害薬(curcumin)あるいはNF-κB活性化阻害薬(PDTC, NAC, ZLLLH, gliotoxin)で前処置後IL-1βで刺激し, IL-6, IL-8, PGE2の産生, c-fbs, c-junのmRNA発現およびAP-1, NF-κBのDNA結合能を検討した. 【結果】(1)IL-1βはMAP kinase(ERK1/2, p38, JNK1/2), IKKα/β, I-κBαのリン酸化, c-fos/c-junのmRNA発現, AP-1とNF-κBのDNA結合およびIL-6, IL-8, PGE2産生を促進した. (2)ERK阻害薬, p38阻害薬, JNK阻害薬の前処理は, IL-1依存的なc-fos, c-junのmRNA発現を, またこれらのMAP kinase阻害薬あるいはAP-1活性化阻害薬の前処理はIL-1依存的なAP-1のDNA結合および各種炎症性因子の産生を抑制した. (3)NF-κB活性化阻害薬の前処理はIL-1依存的なNF-κBのDNA結合および各種炎症性因子の産生を抑制した. 【考察および結論】本研究の結果は, HGFとHPLCにおけるIL-1依存的な各種炎症性因子産生には少なくともMAP kinase-AP-1カスケードとIKK-NF-κBカスケードが共に関与していることを示している.
ISSN:0385-0110