38.口唇病変の超音波画像所見

口唇に生じた病変に対する画像診断は, CTやMRIでは, 口腔内金属修復物のアーチファクトの影響が大きく観察困難な場合があること, また病変が1cm程度までのものものが多く質的判定が困難な場合をしばしば経験する. そのため, 超音波検査法が選択される場合がある. 口唇病変は多彩であり, 腫瘤形成病変としては類表皮嚢胞に代表される皮膚由来の疾患, 唾液腺腫瘍や貯留嚢胞など粘膜領域由来の疾患, その他に血腫や血管腫, 扁平上皮癌などが生じ得る. またびまん性疾患として口唇炎やクインケ浮腫などがある. これらのうちいくつかは臨床所見のみで鑑別できるものもあるが, 例えば貯留嚢胞に炎症性変化が加わった...

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Published in歯科放射線 Vol. 46; no. 2; pp. 81 - 82
Main Authors 高橋 章, 菅原千恵子, 久保典子, 前田直樹, 誉田栄一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2006
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ISSN0389-9705

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Summary:口唇に生じた病変に対する画像診断は, CTやMRIでは, 口腔内金属修復物のアーチファクトの影響が大きく観察困難な場合があること, また病変が1cm程度までのものものが多く質的判定が困難な場合をしばしば経験する. そのため, 超音波検査法が選択される場合がある. 口唇病変は多彩であり, 腫瘤形成病変としては類表皮嚢胞に代表される皮膚由来の疾患, 唾液腺腫瘍や貯留嚢胞など粘膜領域由来の疾患, その他に血腫や血管腫, 扁平上皮癌などが生じ得る. またびまん性疾患として口唇炎やクインケ浮腫などがある. これらのうちいくつかは臨床所見のみで鑑別できるものもあるが, 例えば貯留嚢胞に炎症性変化が加わった場合のように, 臨床所見のみでは充実性腫瘤と必ずしも鑑別が容易でない場合もあり, 超音波検査が鑑別の一助になることがある. その一方で, 口唇領域の超音波診断に関するまとまった検討が今までほとんどなされていないために, 典型的な画像所見が得られない場合には判定に苦慮することがしばしば経験される. そこで口唇病変に対する超音波画像所見の診断能力を向上させることを目的に, 過去に経験した病変の超音波画像所見を再検討した. 1999年4月から2005年12月までの間に口唇部を含めた超音波検査は59例実施されており, うち28例に対して病理組織診断が得られた. 内訳はMucous cystが12例, Pleomorphic adenomaが2例, Epidermoid cystが3例, Angioectasia, Squamous cell carcinomaがそれぞれ1例ずつ, その他炎症性変化が9例であった. これらの超音波所見と組織診断との比較は以下の通りであった. Squamous cell carcinomaおよびEpidermoid cystは口輪筋よりも皮膚側に存在しており, その他は全て口輪筋よりも粘膜側に存在していた. Angioectasiaは腫瘤非形成性の血管造生として観察された. Pleomorphic adenomaは境界明瞭で分葉状または類円形, 皮膜様構造を有しており内部は均一な低エコー~中程度のエコーレベルで, 超音波での判定と病理組織診とが一致した. Mucous cystの超音波所見は多様で, 無エコー腫瘤のもの, 周囲の肉芽形成や唾液腺炎所見によって厚い皮膜様構造が無エコー領域の周囲にみられ嚢胞形成性腫瘍様に観察されるもの, 嚢胞内出血により内部が高エコーとなっているもの, 小唾液腺由来の唾石に起因するcyst形成により内部に高エコー体が観察され膿瘍様に見られるものなどがあった. その一方で, 無エコー領域が観察されたものは全例Mucous cystであった. この結果から, 超音波画像検査は以下の点で有用と考えられた. (1)口唇腫瘤形成検出, および血流の検出に有効である. (2)口輪筋に対する病変の位置をはじめに判定することにより, 可能性のある病変を有効に絞り込むことが期待できる. (3)Mucous cystにおける辺縁部エコーおよび内部エコーは多彩であるが, 中心部無エコー領域の存在は本疾患を強く示唆するものである.
ISSN:0389-9705