16.当科における口腔癌に対する放射線治療のまとめ

当科における口腔癌に対する放射線治療の成績について検討し, 治療成績の向上や副作用の減弱に寄与することを目的とした. 対象は, 1989年8月から2001年2月の間に当科を受診した400名から, 治療を完遂した355名とした. そのうち1次例は255名(72%)であった. 男女比は約1.6対1で, 全体の平均年齢は50代であった. 男性の年齢のmodeは50代, 女性は70代と異なった. 1次例の原発巣の部位は, ICDコードの大分類で口腔が最も多く80%を占めた. 口腔では, 舌(42%)と上下歯肉(36%)が多く, 口腔底(12%), 頬粘膜(9%)と続いた. 治療法は30%がRT単独で,...

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Published in歯科放射線 Vol. 44; no. 4; p. 294
Main Authors 谷本恵子, 柿本直也, 中谷温紀, 村上秀明, 古川惣平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 2004
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ISSN0389-9705

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Summary:当科における口腔癌に対する放射線治療の成績について検討し, 治療成績の向上や副作用の減弱に寄与することを目的とした. 対象は, 1989年8月から2001年2月の間に当科を受診した400名から, 治療を完遂した355名とした. そのうち1次例は255名(72%)であった. 男女比は約1.6対1で, 全体の平均年齢は50代であった. 男性の年齢のmodeは50代, 女性は70代と異なった. 1次例の原発巣の部位は, ICDコードの大分類で口腔が最も多く80%を占めた. 口腔では, 舌(42%)と上下歯肉(36%)が多く, 口腔底(12%), 頬粘膜(9%)と続いた. 治療法は30%がRT単独で, 舌に対してのRT単独の割合(40%)が最高であった. 1次例2次例の5年生存率は, それぞれ67%52%で1次例が有意に高かった. 1次例のステージ別5年生存率は, I(87%), II(83%), III(64%), IV(44%)と, ステージと生存率は相関した. RT単独手術併用の1次例の5年生存率は, それぞれ77%62%であったが, 統計学的な有意差は認められなかった. 部位別の1次例の5年生存率は, 下顎歯肉が89%, 頬粘膜が83%と高く, 上顎洞が45%, 口腔底が50%と低かった. 舌の5年生存率は60%程度であったが, ステージI, IIでは72%, RT単独では71%と低くなく, ステージの進んだ症例の多さが治療成績に影響したものと考えられた. 今後, 失敗症例を中心に, その原因を追及し, また, 生存症例であっても副作用を詳細に検討し, 口腔癌に対する放射線治療の有用性をさらに検討したい.
ISSN:0389-9705