下顎第二大臼歯歯根形態による集団間類似性の検討

目的:下顎第二大臼歯歯根形態による集団間の類似性についてはすでに沖縄を中心として報告している. (第48回日本人類学会)今回は日本を中心とした各地域に加えて, アイヌ, 韓国, 中国および台湾について検討した. 資料と方法:資料は, 日本では鹿児島, 根占(鹿児島), 熊本, 矢部および御船(熊本県), 郡山, 岩手, 鳥取, 岡山, 徳島, 新潟, 奄美大島, 那覇-1, 伊江島, 伊平屋島, 沖縄, 久米島, 名護, 北大東島, 石垣島の各地域, 韓国, 中国では広州および西安, 台湾の高雄から得られた大学あるいは開業医に保存されているパノラマ写真, および鹿児島大学歯学部口腔解剖学教室に...

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Published in歯科放射線 Vol. 36; no. suppl; p. 101
Main Authors 早川佳代子, 森田康彦, 末永重明, 佐藤強志, 野井倉武意, 埴原和郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 1996
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ISSN0389-9705

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Summary:目的:下顎第二大臼歯歯根形態による集団間の類似性についてはすでに沖縄を中心として報告している. (第48回日本人類学会)今回は日本を中心とした各地域に加えて, アイヌ, 韓国, 中国および台湾について検討した. 資料と方法:資料は, 日本では鹿児島, 根占(鹿児島), 熊本, 矢部および御船(熊本県), 郡山, 岩手, 鳥取, 岡山, 徳島, 新潟, 奄美大島, 那覇-1, 伊江島, 伊平屋島, 沖縄, 久米島, 名護, 北大東島, 石垣島の各地域, 韓国, 中国では広州および西安, 台湾の高雄から得られた大学あるいは開業医に保存されているパノラマ写真, および鹿児島大学歯学部口腔解剖学教室に保存されている徳之島の人骨および北海道大学医学部解剖学教室で管理されているアイヌ人骨の下顎骨臼歯部の口内法X線撮影をおこなった. 評価の方法は, 下顎第二大臼歯の近, 遠心根の解離度の程度を一定の基準を設け4型に分類し各地域に於ける頻度を求めた. 統計処理については, 共同報告者の埴原が作成したプログラムにより, Balakrishnan & SanghviのB^2 距離を計算し, その距離行列からのクラスター分析および多次元尺度構成法によってデンドログラムならびに二次元展開図を作成し, 集団間の近縁性を検討した. さらに従来報告されている歯冠形態に関するデータとの関連性については, 順位相関係数により評価した. 結果:全ての地域について, 二次元展開図およびデンドログラムから, 大きく二つのグループに分離された. さらにこのデンドログラムと地理的条件により, 各地区を地理的にグループ化した. すなはち日本, 韓国, 中国, 沖縄, 南西諸島, アイヌとしたが, 徳島, 熊本の矢部, 御船および新潟は地理的条件と一致せず独立して扱った. このような地理的グループ化による分析で, 日本全体では北東アジア系が主体となっているが, 南西諸島, 沖縄の一部, 高雄, 広州, さらに日本でも徳島, 御船, 矢部および新潟のように局在的に東南アジア系の形質が温存されていることが思惟された. このことは日本人のルーツについての二重構造説, さらにアイヌは沖縄に近いという埴原の見解と一致する. 現在の日本人の構成は今でも渡来人の影響を受けながら, しかも急速な文化の発達と交通機関の進歩により加速度的な変遷を表わしていると言われているが, まだ日本の一部では東南アジア系の形質が温存されているものと考えられた. さらに歯の形態や計測による日本人のルーツの解明を論究している埴原恒彦の歯冠形態のデータとの相関関係を検討したが, かなり高い相関関係が得られた. このことは従来人類学的分析手法としての歯の形態あるいは計測がおこなわれているが, X線学的な歯根の形態分析との間にも高い関連性が見られた.
ISSN:0389-9705