14.子宮頚部上皮内腫瘍に対する光線力学的治療

近年, 子宮温存を要する若年者に子宮頸部上皮内腫瘍は増加傾向にあり, 子宮温存治療が望まれる. そこで婦人科領域でも外科的切除を要しない光線力学的治療PDT(Photodynamic Therapy)が現在, 脚光を浴びている. これは腫瘍親和性感受性物質ポルフィマーナトリウム(PHE:Polyhematoporphyrin ether/ester)と低出力レーザー照射との併用で, 正常組織への障害を最小限に押さえ, 主として腫瘍組織のみを治療する腫瘍特異的治療法である. 当科でも2000年7月より石川島播磨社製YAG-OPOレーザーにて治療を開始した. 今回はこの治療成績, 副作用の検討,...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 27; no. 2; p. 136
Main Authors 加藤久盛, 井畑穰, 三田俊二, 小野瀬亮, 中山裕樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本レーザー医学会 2006
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ISSN0288-6200

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Summary:近年, 子宮温存を要する若年者に子宮頸部上皮内腫瘍は増加傾向にあり, 子宮温存治療が望まれる. そこで婦人科領域でも外科的切除を要しない光線力学的治療PDT(Photodynamic Therapy)が現在, 脚光を浴びている. これは腫瘍親和性感受性物質ポルフィマーナトリウム(PHE:Polyhematoporphyrin ether/ester)と低出力レーザー照射との併用で, 正常組織への障害を最小限に押さえ, 主として腫瘍組織のみを治療する腫瘍特異的治療法である. 当科でも2000年7月より石川島播磨社製YAG-OPOレーザーにて治療を開始した. 今回はこの治療成績, 副作用の検討, ならびにHPV(Human Papilloma Virus)の消退を経時的に追跡したので報告する. 【方法】治療効果は, PDT治療後の1. 3. 6ヶ月後にコルポスコープ, 頸部細胞診を採取して判定した. 同時に頸部擦過細胞診にてHPVをPCR法により治療前, 治療後1. 3. 6ヶ月ごとに型別判定を行った. 副作用については日焼け, 下腹部痛, 発熱, 頸管狭窄, 精神不安につき検討した. 2006年1月まで治療した子宮頸部上皮内腫瘍35例(高度異形成13例, 子宮頸癌0期19例, 子宮頸癌1a1期3例)につき検討した. 【成績】平均年令30才(21~44歳), 頸部細胞診による治療成績は35例中3例は, 治療後1ヶ月でクラス3aまたは3の評価であったが治療後3ヶ月には全例陰性化し初回治癒率は100%であった. 1例に48ヶ月目にクラス3aが出現したが60ヶ月には陰性化している. PDT施行後のHPV消退は検索し得た34例中, 1ヶ月後に25例(73.5%)が陰性化した. 陰性化したにもかかわらず25例中8例は再陽性となっており潜在感染の検出あるいは新感染を認めた. 副作用では日焼けを57%に認めたがステロイド軟膏塗布にて軽快した. 下腹部痛は40%, 発熱は31%に認めたが術後の頸管炎によるもので術後の頸管拡張, 抗生物質の投与により緩和された. 頚管狭窄は11%に認めたが頚管閉鎖には至っていない. またPDT後の妊娠例は7例, 出産例は6例の報告を戴いた. 【結論】PDTによる子宮頚部上皮内腫瘍に対する初回治癒率は100%と極めて良好であったが, HPVの再感染あるいは持続感染例もあるので再発, 再燃に厳重管理が必要と考える. また我々の対象は若い女性であるため副作用としての日焼けは我々医療従事者が予想しているより強くストレスと感じており, 今後の課題ではあるが遮光管理の容易な腫瘍親和性光感受性物質の製品化が待たれる.
ISSN:0288-6200