9. フローサイトメトリーによる補体制御膜蛋白(CD55, CD59)測定でのPNH陽性血球検出の有用性について

【はじめに】発作性夜間血色素尿症(PNH)は, 造血幹細胞レベルでのPIGA遺伝子の突然変異によるglycosyl phosphatidyl inositol(GPI)アンカーの合成障害により, GPIアンカーに結合する補体制御蛋白であるCD55(DAF)およびCD59が発現されず, CD55およびCD59を欠いたPNH陽性血球の補体感受性が亢進し血管内溶血をきたす疾患である. フローサイトメトリーによるPNH陽性血球の検出は, 従来のPNH診断検査であるsugarwater試験およびHam試験に比べ, 微少のPNH陽性血球を検出することが可能であり, 平成16年4月よりPNH診断のための赤血...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 1; pp. 98 - 99
Main Authors 笹田景子, 福吉葉子, 川口辰哉, 堀川健太郎, 宮家宏定, 今村華奈子, 宮川静代, 原田美保, 池田勝義, 内場光浩, 満屋裕明, 米村雄士, 安東由喜雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2009
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ISSN1881-3011

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Summary:【はじめに】発作性夜間血色素尿症(PNH)は, 造血幹細胞レベルでのPIGA遺伝子の突然変異によるglycosyl phosphatidyl inositol(GPI)アンカーの合成障害により, GPIアンカーに結合する補体制御蛋白であるCD55(DAF)およびCD59が発現されず, CD55およびCD59を欠いたPNH陽性血球の補体感受性が亢進し血管内溶血をきたす疾患である. フローサイトメトリーによるPNH陽性血球の検出は, 従来のPNH診断検査であるsugarwater試験およびHam試験に比べ, 微少のPNH陽性血球を検出することが可能であり, 平成16年4月よりPNH診断のための赤血球細胞表面解析が保険で認められるようになった. 今回我々は, 検査室レベルで多検体測定が可能である簡便な方法を用いて赤血球ならびに顆粒球のCD55, CD59発現の測定解析を行い, 免疫病態マーカーとなる1%以下の微少PNH陽性血球検出について検討も行った. 【対象および方法】対象はEDTA2K採血による末梢血液を用い健常人(n=18:男性7, 女性11), PNH(n=4), AA-PNH(n=4), AA(n=22), MDS(n=5)の計53名とした. 方法はCD55, CD59, CD235a, CD11bを使用し, CYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)にて測定解析を行った. 【結果】1)同時再現性は, 健常人およびPNH陽性検体においていずれも良好な成績であったが, 顆粒球がより安定していた. 2)PNH陽性血球(CD55-/59-cells)検出率は, 検出率を(1)0.05%未満, (2)0.05~1.0%, (3)1.0%以上の3群に分けた結果, 健常人は赤血球, 顆粒球共に全て0.05%未満であったが, PNHおよびPNH関連疾患では赤血球測定での0.05%~1.0%の検出群に偽陽性の存在が疑われるため, 赤血球1.0%以上, 顆粒球は健常人同様0.05%以上を閾値と設定すると陽性率はほぼ一致した. また, PNHおよびAA-PNHでPNH陽性血球が少ない患者の場合, 赤血球の溶血が亢進するとPNH陽性血球も減少し検出が困難となるため, 溶血の影響を受けない顆粒球での測定が有効であった. 【考察】PNHクローン血球は健常人の末梢血中にもごく少数検出されるが, PNHはもとより骨髄不全の患者で再生不良性貧血の約5割, 骨髄異形成症候群の不応性貧血の約2割にPNH陽性血球の増加が認められると言われており, 今回の検査において同様の結果が得られた. フローサイトメトリーによるPNH陽性血球の検出は感度および特異性から赤血球および顆粒球の両方を測定することで精度がより向上すると思われる. 【結論】全血検体を用いる赤血球および顆粒球のCD55, CD59の測定は, 手技が簡便でかつ短時間に多検体の測定が可能であり, 再現性に関しても赤血球および顆粒球いずれも良好な結果であった. 感度および特異性の高い測定結果から免疫病態マーカーとなる1%以下の微少PNH陽性血球検出が可能であった.
ISSN:1881-3011