33.自己血輸血中に異常知覚を訴え,輸血を中止した1症例

【はじめに】自己血輸血は, 多くの輸血患者が対象となる同種血輸血の代替療法である. 同種血輸血により伝播する感染症や同種免疫反応などを避けることを最大のセールスポイントとして, 自己血輸血は増加している. 今回, 我々は自己血を輸血中に患者が異常知覚を訴え, 自己血輸血を中止した症例を経験したので報告する. 【症例】患者:67歳 女性 O型Rh(+)妊娠歴:3回 輸血歴:無 不規則抗体:陰性 HCV抗体:陽性 現疾患名:両変形性膝関節症 全身性エリテマトーデス家族病歴:無 医薬品副作用歴:無 アレルギー素因等:無【経過】平成18年2月20日:術前貯血400ml 3月16日:右人工膝関節置換術...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 53; no. 1; pp. 91 - 92
Main Authors 竹山朋希, 川村綾乃, 山倉栄子, 米野修一, 江角誠, 藤重晴久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2007
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ISSN1881-3011

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Summary:【はじめに】自己血輸血は, 多くの輸血患者が対象となる同種血輸血の代替療法である. 同種血輸血により伝播する感染症や同種免疫反応などを避けることを最大のセールスポイントとして, 自己血輸血は増加している. 今回, 我々は自己血を輸血中に患者が異常知覚を訴え, 自己血輸血を中止した症例を経験したので報告する. 【症例】患者:67歳 女性 O型Rh(+)妊娠歴:3回 輸血歴:無 不規則抗体:陰性 HCV抗体:陽性 現疾患名:両変形性膝関節症 全身性エリテマトーデス家族病歴:無 医薬品副作用歴:無 アレルギー素因等:無【経過】平成18年2月20日:術前貯血400ml 3月16日:右人工膝関節置換術 出血300ml 3月17日:AM10時より輸血開始(4ml/min). 11時ごろ「両腕の付け根(両腋窩部)が突っ張る感じがして痛いです. 両上肢全体に広がっている. 」との訴えあり. 自己血投与中止. 14時には症状軽快し消失した. 【検査結果】《自己血製剤》血液型:O型Rh(+)色調:暗赤色 細菌培養:陰性《患者》血液型再検査:O型Rh(+)不規則抗体:陰性 抗HLA抗体:陰性 体温:37.2度 Vital sign(発作時)BP:144/86mmHg PR:86/min SpO2:97%(room air)【まとめ】自己血輸血は最も安全な輸血療法としての認識が強く, 返血時よりも採血時の副反応や保存時のトラブルが注目されがちであるが, 1997年に自己血輸血学会が行ったアンケート調査では返血時の副反応やトラブルが109件(患者数の約0.8%)あったと報告されている. 今回の症例では自己血輸血時に動悸, 異常知覚が出現したがVital signなどの他覚的異常所見はなく正常であったが輸血副作用を否定することはできない. 輸血を中止後, 速やかに症状消失したため, 不安発作あるいは過換気症候群の可能性がより高いと考えるが詳細は不明である. 自己血インフォームド・コンセントでは, 利点のみに言及しがちであるが説明が必要な副反応も存在する. 現在, その発生頻度などの報告は少なく, 自己血輸血安全性確保のためにもそれらの更なる研究も今後の検討課題であると思われる.
ISSN:1881-3011