4 遡及調査のガイドラインについて-血液センター(東京都内)の取り組み

2005年3月に「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」(以下, GL)が制定され, 日本赤十字社の遡及調査の対応が明確に示された. これにより, 感染症スクリーニング検査でも検出できない感染性のある血液について遡及調査の体制が整備され, 受血者の感染状況, それによる感染拡大の予防, 感染が成立していた際の治療方針の決定等の対策が取れるようになってきた. 【対象】遡及調査の発端となる情報は, 1. 医療機関で輸血用血液製剤による感染が疑われた場合(以下, 医療機関発), 2. 献血者の検査結果からの感染が判明し(疑いを含む), 献血歴がある場合(以下, 供血者発)であり, 献血後に関する情報...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 51; no. 4; p. 399
Main Authors 高橋好春, 高橋雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2005
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ISSN0546-1448

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Summary:2005年3月に「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」(以下, GL)が制定され, 日本赤十字社の遡及調査の対応が明確に示された. これにより, 感染症スクリーニング検査でも検出できない感染性のある血液について遡及調査の体制が整備され, 受血者の感染状況, それによる感染拡大の予防, 感染が成立していた際の治療方針の決定等の対策が取れるようになってきた. 【対象】遡及調査の発端となる情報は, 1. 医療機関で輸血用血液製剤による感染が疑われた場合(以下, 医療機関発), 2. 献血者の検査結果からの感染が判明し(疑いを含む), 献血歴がある場合(以下, 供血者発)であり, 献血後に関する情報(以下, 献血後情報)が対象である. 東京都内の血液センターでは, GLに則った遡及調査を医療機関発について2005年7月より, 供血者発について2004年8月より「献血後情報の対応手順」を設定し実施している. 【献血後情報の種類】(1)感染症報告に関する情報…医療機関からの感染症報告による被疑薬の同一製造番号の輸血用血液製剤及び原料血漿に関する情報(2)AIDSの自己申告情報…献血者の献血後AIDSの自己申告に関する情報(3)献血者健康情報…献血後の献血者の健康障害に関する情報(4)複数回献血者の陽転情報(HBV, HCV, HIV)…複数回献血者のウィルス関連マーカーの陽転に関する情報(5)事後(問診該当)連絡情報…献血事後の連絡により問診の項目に不適格事項に関する情報(vCJD発症事例に基づく1980年~1996年の間に一日以上の英国滞在歴を有する献血者受入制限により2005年6月1日以降の遡及調査の範囲が拡大した. )(6)プリオン病…プリオン病と診断された患者の献血歴に関する情報(7)その他…必要に応じその他の病原体に関する情報等である. 【対応】血液センターは, 対象製剤について供給停止, 使用停止, 回収処理および情報提供等を行っている. 情報の精査に関しては(1)(2)(3)(4)(5)について可能な限りHBV, HCV, HIVの個別NAT検査を実施し, 医療機関へ追加情報, リスク評価等を提供している. また, 医療機関より受血者情報を収集し分析, 評価を行い, 必要に応じ因果関係の解明および新たな感染防止策の基礎データとしている. 【結語】より安全, 安心な輸血医療が行われるためには, GLに則った遡及調査の実施が必要不可欠である. 特に医療機関の対応により提供される情報は, 今後の安全な輸血に資するものと考える. 今後は, 血液センター並びに医療機関の取り組みを通じて分析, 評価を加え, 更なる実効性のあるものにするべきと考える.
ISSN:0546-1448