4 ABO不適合造血幹細胞移植における血液型検査:FCMの有用性

ABO不適合造血幹細胞移植においては, 移植前患者血液型からドナー血液型への変化を検査していくことが必要となる. また, Major mismatchにおいて患者赤血球抗原の消失を確認することは, 輸血用赤血球製剤の血液型決定にも必要な情報である. 当院においては赤血球抗原検査では試験管法, カラム法, 吸着解離試験に加え, FCMを実施して判定の一助としている. [方法]モノクローナル抗Aまたは抗B抗体(マウス)を一次抗体として感作後, FITC標識抗マウスIgM抗体を二次抗体として感作, Cytoron(Ortho)にて測定した. [結果]症例1では患者A型, ドナーB型で移植病日122日...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 51; no. 3; p. 353
Main Authors 上村知恵, 松橋博子, 持田範之, 五十嵐靖弘, 米沢有希, 藤野馨, 鳥海綾子, 真田梓美, 桑原真美, 太田香保里, 石田明, 半田誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2005
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:ABO不適合造血幹細胞移植においては, 移植前患者血液型からドナー血液型への変化を検査していくことが必要となる. また, Major mismatchにおいて患者赤血球抗原の消失を確認することは, 輸血用赤血球製剤の血液型決定にも必要な情報である. 当院においては赤血球抗原検査では試験管法, カラム法, 吸着解離試験に加え, FCMを実施して判定の一助としている. [方法]モノクローナル抗Aまたは抗B抗体(マウス)を一次抗体として感作後, FITC標識抗マウスIgM抗体を二次抗体として感作, Cytoron(Ortho)にて測定した. [結果]症例1では患者A型, ドナーB型で移植病日122日の検査で試験管法にて抗Aのみに3+の部分凝集を認め, FCMではA抗原陽性血球34.1%あった. 症例2では患者O型ドナーA型で移植病日106日での検査で試験管法にて抗Aに3+の部分凝集, FCMではA抗原陽性血球65.7%であった. 症例3では患者A型, ドナーO型で移植病日291日に検査し, 試験管法抗Aに凝集陰性, FCM A抗原陽性血球0%であった. これらの3症例はいずれも試験管法とFCMの結果が一致していた. 症例4では患者B型, ドナーA型で移植病日157日の検査において, 試験管法のおもて検査でB型であったが, FCMではA抗原陽性血球を1.9%認めた. この症例は同日の末梢血データで汎血球減少を呈しており生着不全と診断された. この時点で臍帯血移植も検討されたがドナー由来赤血球がわずかながら認められたことから, まず免疫抑制剤増量が試みられた. その後, 移植病日188日にはA抗原陽性血球35.6%とドナー由来赤血球が増加し, 血球も回復傾向が見られ始めた. [まとめ]試験管法で凝集陰性例, FCMで抗原陽性細胞を検出した症例を経験した. この症例においては, ドナーとはHLA完全一致, 性別一致, 染色体異常なしで, 移植前のマイクロサテライトも実施していなかったため, FCMでの赤血球抗原解析による赤血球混合キメリズム検出が有用であった.
ISSN:0546-1448