E11-1 Immuno-PCRを用いた生体内微量物質の高感度検出法

これまで, Radioimmunoassay(RIA)法やEnzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法を用いて, 生体内微量物質の測定が行われてきた. しかし, これらの測定法には検出感度の面で一定の限界があり, いまだ基準値の設定すら出来ていない物質も少なくない. そこで, 抗原抗体反応の特異性とPCR法の感度を併せ持つ, Immuno-PCRを用いて高感度検出法の開発を試みている. 腫瘍壊死因子(TNFα)を例にとると, 我々が開発したImmuno-PCR法の検出感度は0.001pg/mlであり, 対照としたELISA法の50pg/mlに比べ, 約5万...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 50; no. 2; p. 237
Main Author 渡辺直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2004
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ISSN0546-1448

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Summary:これまで, Radioimmunoassay(RIA)法やEnzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法を用いて, 生体内微量物質の測定が行われてきた. しかし, これらの測定法には検出感度の面で一定の限界があり, いまだ基準値の設定すら出来ていない物質も少なくない. そこで, 抗原抗体反応の特異性とPCR法の感度を併せ持つ, Immuno-PCRを用いて高感度検出法の開発を試みている. 腫瘍壊死因子(TNFα)を例にとると, 我々が開発したImmuno-PCR法の検出感度は0.001pg/mlであり, 対照としたELISA法の50pg/mlに比べ, 約5万倍の感度上昇が可能であった. さらに, 従来の方法では検出出来なかった健常者血清中のTNFα濃度を測定したところ, 0.004~0.118pg/mlに分布し平均0.027pg/mlであることが明らかになった. そこで, 本法を用いて, 炎症性腸疾患(IBD)など各種疾患の病態解析を試みた. たとえば, 潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)患者の血清TNFα濃度を測定したところ, 平均血清TNFα濃度は, それぞれ30.3pg/ml, 208.4pg/mlと, 健常者に比べUCで約1,100倍, CDで約7,700倍高値であった. しかし, 54検体中ELISA法で検出可能であったものは4検体(7.4%)にすぎなかった. さらに, 血清TNFα濃度は, 活動期に比べ非活動期では明らかに低下し, CRPよりも鋭敏に病態を反映していた. 本法は他の生体内微量物質の検出にも応用可能であり, Interleukin(IL)-18 Osteoprotegerin dimerやアンジオテンシノーゲンについても, 対照としたELISA法に比べ, それぞれ約1万6千倍, 約2万5千倍, 約25万倍感度が上昇することを確認している. 今後, 各種生体内微量物質に関してImmuno-PCRを用いた高感度検出法の開発が進み, 病態解析に新たな局面が訪れることを期待したい.
ISSN:0546-1448