核酸増幅検査(NAT)で検出された3例のHBV-DNA陽性血について

[目的] 輸血用血液を含む全ての献血血液の安全性向上を目的として日本赤十字社では1999年10月からNATが実施されている. 当センターでは1998年~2000年の間にNATで3例のHBV-DNAが検出されたとの報告を受け, 患者及び献血者の追跡調査を行ったので報告する. [方法] セグメント(2例)及び試験管検体(1例)によるHBV-DNA陽性血液の輸血患者(3名)及び献血者(3名)の追跡調査を行い, 採取した関連血液について精査・解析した. [結果及び考察] 原料血漿セグメントによるNAT陽性の2例の輸血用血液は, 3名の患者に輸血されており, 内1名は(84歳, 女性)は輸血前HBs抗原...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 219
Main Authors 喜多忠志, 新田誠, 伊藤寿美恵, 円満字豊, 金光公浩, 大川力, 大沼均, 田中建志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2001
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ISSN0546-1448

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Summary:[目的] 輸血用血液を含む全ての献血血液の安全性向上を目的として日本赤十字社では1999年10月からNATが実施されている. 当センターでは1998年~2000年の間にNATで3例のHBV-DNAが検出されたとの報告を受け, 患者及び献血者の追跡調査を行ったので報告する. [方法] セグメント(2例)及び試験管検体(1例)によるHBV-DNA陽性血液の輸血患者(3名)及び献血者(3名)の追跡調査を行い, 採取した関連血液について精査・解析した. [結果及び考察] 原料血漿セグメントによるNAT陽性の2例の輸血用血液は, 3名の患者に輸血されており, 内1名は(84歳, 女性)は輸血前HBs抗原陰性で輸血4ヶ月後にHBV-DNAのみが陽性となったが, 7ヶ月半後には陰性化した. この間, HBs抗原, HBs抗体, HBc抗体はいずれも陰性であったが, 輸血前, 4ヶ月及び7ヶ月半後とALTに若干の上昇(15→48→187IU/L)が見られた. 他の患者2名の内1名は原疾患で死亡, 1名は早期退院で追跡不能であった. 一方, 献血者2名(17歳及び24歳, 共に男性)は, 3ヵ月後の再採血においていずれもHBV-DNA陰性, HBs抗原陰性, HBc抗体及びHBs抗体が陽転化しており, ウインドウピリオドの献血であることが明らかとなった. その間, 肝機能は正常範囲にあり, 一過性の不顕性感染であった. 3例目は試験管検体によるNAT陽性例で, 献血者(53歳, 男性)血液は極微量のHBV(<100copies/ml)を含み, 他のすべてのHBVマーカーは陰性であった. 1ヵ月後にHBV-DNAが陰性化するとともにHBc抗体及びHBs抗体が陽転(弱陽性)化し, 一過性の不顕性感染と思われた. NATの実施は期待通り, ウインドウピリオド(抗原・抗体反応)献血血液の輸血用血液からの排除を可能とした. ウイルス量と感染との関連付けが期待される.
ISSN:0546-1448