悪性リンパ腫患者における適合血の選択について

〔目的〕私達は抗体スクリーニング陰性で交差試験適合血を輸血したにも関わらず, 輸注効果がみられなかった悪性リンパ腫患者に対して血液型マッチの赤血球製剤を使用する事により輸注効果を認めた2症例を報告する. 〔対象および成績〕第一の症例は悪性リンパ腫の疑いで当院に入院した18歳の男性で貧血改善のため新鮮洗浄血を輸血したが輸注効果が認められず臨床側より精査の要請を受けた. しかし患者血清中に赤血球抗体は検出されず, 直接クームス試験も陰性であった. 再度輸血を実施したが輸注効果は認められなかった. 初回輸血より約2ヵ月経過後, 患者血清中に抗C+e抗体が検出され, Rh糸マッチの赤血球製剤により輸注...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 33; no. 2; p. 136
Main Authors 宮沢浩子, 川平宏, 阿部まを, 神田靖男, 八田善弘, 馬場真澄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1987
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ISSN0546-1448

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Summary:〔目的〕私達は抗体スクリーニング陰性で交差試験適合血を輸血したにも関わらず, 輸注効果がみられなかった悪性リンパ腫患者に対して血液型マッチの赤血球製剤を使用する事により輸注効果を認めた2症例を報告する. 〔対象および成績〕第一の症例は悪性リンパ腫の疑いで当院に入院した18歳の男性で貧血改善のため新鮮洗浄血を輸血したが輸注効果が認められず臨床側より精査の要請を受けた. しかし患者血清中に赤血球抗体は検出されず, 直接クームス試験も陰性であった. 再度輸血を実施したが輸注効果は認められなかった. 初回輸血より約2ヵ月経過後, 患者血清中に抗C+e抗体が検出され, Rh糸マッチの赤血球製剤により輸注効果は改善された. しかしその後Rh系マッチの赤血球製剤使用によっても輸注効果が認められなくなり, 抗体検査の結果Rh系以外の赤血球抗体も産生された可能性が示唆された. このため可能な限り患者と血液型のマッチした赤血球製剤を使用することにより輸注効果の改善をみた. 第二の症例は, 前例の経験を生かし, 抗体スクリーニング陰性で輸注効果が認められなかったためRh系およびその他の可能な限りの血液型のマッチした赤血球製剤を使用する事により輸注効果の改善が得られた. 〔結論〕以上の2症例の経験より, 抗体スクリーニングや交差適合試験が必ずしも万能ではないこと, また抗体スクリーニング陰性であっても輸血副作用の原因となりうる血液型について患者とマッチングさせた赤血球製剤の使用が輸注効果を期待出来ることなどが実際上考えられた.
ISSN:0546-1448