II-6-9 孤発的咽頭期嚥下運動における下顎と舌骨運動の2次元動作解析

【目的】健常者を対象とした, カテーテルによる液体の咽頭注入実験における, 口腔運動を伴わない気道防御的な咽頭期嚥下運動の報告が散見される. 我々は, 通常の摂食を模した状況においても, 系列的な舌の食塊移送運動を伴わない孤発的な咽頭期嚥下運動(isolated pharyngeal swallow;IPS)を認めた. 本研究の目的は, 2次元動作解析を用いて, 混合物摂食中の咀嚼運動とIPSとの関係を明らかにすることである. 【方法】インフォームドコンセントを得た健常者35人(平均年齢54歳)を対象とした. 嚥下造影下で, 被検者が液体と半固形物の混合物を咀嚼嚥下している場面の側面像を録画し...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; pp. 417 - 418
Main Authors 横山通夫, 馬場尊, 才藤栄一, 加賀谷斉, 金森大輔, 尾崎研一郎, 岡田澄子, 米田千賀子, 小野木啓子, 尾関恩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2008
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ISSN1343-8441

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Summary:【目的】健常者を対象とした, カテーテルによる液体の咽頭注入実験における, 口腔運動を伴わない気道防御的な咽頭期嚥下運動の報告が散見される. 我々は, 通常の摂食を模した状況においても, 系列的な舌の食塊移送運動を伴わない孤発的な咽頭期嚥下運動(isolated pharyngeal swallow;IPS)を認めた. 本研究の目的は, 2次元動作解析を用いて, 混合物摂食中の咀嚼運動とIPSとの関係を明らかにすることである. 【方法】インフォームドコンセントを得た健常者35人(平均年齢54歳)を対象とした. 嚥下造影下で, 被検者が液体と半固形物の混合物を咀嚼嚥下している場面の側面像を録画した. この嚥下課題を各被検者で2回施行した. 一連の摂食中にIPSを認めた画像において, 上顎を基準として下顎と舌骨運動を2次元動作解析した. 【結果】35人中11人, 70施行中14施行にIPSが認められた. すべてのIPSは摂食中における初発の嚥下であり, またその多くが摂食開始後の比較的早期に認められた. 咽頭嚥下開始のタイミングと咀嚼運動のリズムとの関係をIPSと通常の咽頭期嚥下運動(consecutive pharyngeal swallow;CPS)との間で比較した. ほぼすべてのCPSは, 咀嚼運動が停止した後に出現していた. 一方, IPSは開口と咬合のどちらの相でも出現していた. 下顎停止から咽頭嚥下開始までの時間はIPSとCPSの間で統計学的に有意差を認めた(P<0.05). 【考察】IPSは混合物の摂食過程の初発で起こっていた. さらにIPSでは通常の咽頭期嚥下運動の場合とは異なり, 咽頭嚥下惹起は必ずしも咀嚼停止した後ではなかった. これらの結果から, IPSは口腔期嚥下運動と独立した, 摂食中の気道防御目的の咽頭期嚥下運動で, 液体の咽頭注入実験で認められる嚥下運動と同一であることが推察された.
ISSN:1343-8441