II-5-17 摂食時と日常生活での姿勢を中心とする援助により摂食機能が改善した例

「症例」1歳2ヶ月時の交通事故による脳挫傷脳出血の後遺症. 現在7歳. 重度四肢麻痺で, 頸定なく座位保持不可能, 体幹は低緊張, 四肢の自発運動はわずかで, 視覚・聴覚反応弱く, 体温調節障害, てんかんを伴う. 2歳6ヶ月より経口摂取が主で不調時のみ経管栄養を必要としていた. しかし, 4歳末より, 感染症やてんかん悪化などの誘因が無かったにもかかわらず経管栄養を要することが増え, 摂食時のむせが多くなり, 5歳8ヶ月には経管栄養にほぼ依存する状態となったため, 摂食姿勢の再検討などの指導援助を積極的に行った. 「援助の内容と経過」上体が床から約75度で摂食していた. 骨盤は後傾し胸部が前...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 11; no. 3; p. 343
Main Authors 佐々木清子, 北住映二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2007
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ISSN1343-8441

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Summary:「症例」1歳2ヶ月時の交通事故による脳挫傷脳出血の後遺症. 現在7歳. 重度四肢麻痺で, 頸定なく座位保持不可能, 体幹は低緊張, 四肢の自発運動はわずかで, 視覚・聴覚反応弱く, 体温調節障害, てんかんを伴う. 2歳6ヶ月より経口摂取が主で不調時のみ経管栄養を必要としていた. しかし, 4歳末より, 感染症やてんかん悪化などの誘因が無かったにもかかわらず経管栄養を要することが増え, 摂食時のむせが多くなり, 5歳8ヶ月には経管栄養にほぼ依存する状態となったため, 摂食姿勢の再検討などの指導援助を積極的に行った. 「援助の内容と経過」上体が床から約75度で摂食していた. 骨盤は後傾し胸部が前に出て顎がやや突き出て対称性の姿勢の保持も困難であった. これを変更し, 上体の後傾角度を強くし(床から30度~20度), また, 適度な頸部の角度を保持するようにした. これにより, 摂食中のむせが減少してきた. さらに, 日常的に, 喘鳴(貯留性のゼコつき)が多くなってきていたため, 日常的な姿勢として, 腹臥位と側臥位, および座位での前傾姿勢を, 積極的に取り入れるようにした. これらの対応により摂食量は増加し, 日常的な喘鳴も軽減してきた. その後, 他院で新しい抗てんかん剤が追加された後に喘鳴の増加, 摂食の悪化があったが, 薬を当院で処方することとし薬を減量することにより, この一時的悪化は改善した. 口唇の閉じや取込みも見られるようになってきており, 現在, 昼と夕には経口で充分量を摂取できている. 「考察」成長に伴う摂食状況の悪化に対して, 上体や頸部の姿勢の再検討を中心とした援助, 日常的な姿勢保持管理への援助が有効であり, 薬の量の調整も重要であった. また, 手での遊びを日常生活の中に積極的に取り入れることにより覚醒度が上がったことも, 摂食の改善に結びついたと考えられる.
ISSN:1343-8441