293 高齢者に対する効果的な体幹伸展エクササイズの検討

骨粗鬆症に罹患し脊椎圧迫骨折を起こし, ADLやQOLが低下している高齢者はたいへん多い. 我々は高齢者が簡便に行え, 筋力増強効果が得られる体幹伸展エクササイズの方法を模索してきた. 今回, 新徒手筋力測定法第7版(協同医書)における背臥位での股関節伸展筋力の測定法を参考にしたエクササイズを含め, 実際の体幹伸展筋力との相関を検討した. 対象は, 当院を利用している65歳以上の高齢者54名(男性18名, 女性36名)とした. 研究の趣旨を説明し, 同意を得た. 背筋筋力の測定はGT-350(OG技研社製)を用いて, 座位における最大努力での等尺性背筋筋力を測定し, 体重比で表した. エクササ...

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Published in理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 147
Main Authors 山本圭彦, 福原千史, 浦辺幸夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2004
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ISSN0289-3770

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Summary:骨粗鬆症に罹患し脊椎圧迫骨折を起こし, ADLやQOLが低下している高齢者はたいへん多い. 我々は高齢者が簡便に行え, 筋力増強効果が得られる体幹伸展エクササイズの方法を模索してきた. 今回, 新徒手筋力測定法第7版(協同医書)における背臥位での股関節伸展筋力の測定法を参考にしたエクササイズを含め, 実際の体幹伸展筋力との相関を検討した. 対象は, 当院を利用している65歳以上の高齢者54名(男性18名, 女性36名)とした. 研究の趣旨を説明し, 同意を得た. 背筋筋力の測定はGT-350(OG技研社製)を用いて, 座位における最大努力での等尺性背筋筋力を測定し, 体重比で表した. エクササイズの項目は以下の3種類である. 1)背臥位での股関節伸展運動として, 対象の踵部をベッドから50cm挙上した位置で検査者が保持する. 対象は踵部をベッドの方向に押し付けるように努力する. この時, 殿部の挙上がみられるか, 体幹を含めて身体を一直線にできるかなどを観察する. 検査者は踵部の下にPower Track II(JTech Medical社製)を置き, 股関節伸展筋力を測定する. 2)腹臥位にてOn hands pushupでの下顎最大挙上高を測定する. 3)腹臥位にて上肢を体幹に沿わせ, 上体反らし運動での下顎最大挙上高を測定する. 背筋筋力と1), 2), 3)の相関を比較する. なお, 対象は短距離の歩行は自立しており, 移動能力の評価指標として10m歩行時間を記録した. 背筋筋力の平均値は7. 64±3. 04N/kg(1. 96から11. 50N/kg)だった. エクササイズ1)による股関節伸展筋力の平均値は2. 34±0. 46N/kg(1. 34から3. 01N/kg)だった. エクササイズ2)の平均値は45. 0±9. 0cm(28. 5から57. 5cm)だった. エクササイズ3)の平均値は10. 9±9. 2cm(0. 5から55. 0cm)だった. 同一対象間では2)は3)より大きかった. 背筋筋力と1)および3)の間に正の相関が認められた(p<0. 05). 多くの高齢者が容易にとれる背臥位における体幹伸展のエクササイズとして, ブッリッジ動作について先行研究(2003)で検討したが, 背筋筋力との相関は必ずしも高くなかった. 今回行った股関節伸展筋力の測定法を参考にした運動は, 背筋筋力と相関が認められたことで, 高齢者が背臥位で行えるエクササイズとして有用性をさらに追求すべきと考えた. エクササイズに適応し腹臥位がとれるようになれば, エクササイズ2)のように徐々に体幹伸展の可動性を向上させつつ, エクササイズ3)のように直接的に背筋群の収縮を高め, 一連のプログラムを作成し, 効果を検討していきたい.
ISSN:0289-3770