15. むち打ち関連障害後にwidespreadpainを合併した1症例

骨折・脱臼や出血性外傷を示さないむち打ち関連障害(WAD)は一般に予後良好であるが, 受傷後に痛みが遷延・拡大する症例が存在する. 49歳女性. 既往に変形性股関節症による右股関節痛の加療歴を有した. 交通外傷で頸部および腰部を打撲・捻挫し画像所見に著変を示さなかったが, 股関節痛が再発, 頸部痛と腰背部痛が増強して紹介となった. 初診時, 後頸部から腰背部および右下肢の広範な部位にわたる重く気持ちの悪い痛みを訴えた. これらは神経支配に一致せず, 頸椎可動域制限や各種神経学的所見に異常はなかった. 線維筋痛症の圧痛点は9/18点, 東邦大式抑うつ尺度(SRQ-D)20点と抑うつ状態, nec...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 17; no. 4; p. 535
Main Authors 石川慎一, 高田研, 西江宏行, 塩崎恭子, 佐藤健治, 溝渕知司, 森田潔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2010
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ISSN1340-4903

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Summary:骨折・脱臼や出血性外傷を示さないむち打ち関連障害(WAD)は一般に予後良好であるが, 受傷後に痛みが遷延・拡大する症例が存在する. 49歳女性. 既往に変形性股関節症による右股関節痛の加療歴を有した. 交通外傷で頸部および腰部を打撲・捻挫し画像所見に著変を示さなかったが, 股関節痛が再発, 頸部痛と腰背部痛が増強して紹介となった. 初診時, 後頸部から腰背部および右下肢の広範な部位にわたる重く気持ちの悪い痛みを訴えた. これらは神経支配に一致せず, 頸椎可動域制限や各種神経学的所見に異常はなかった. 線維筋痛症の圧痛点は9/18点, 東邦大式抑うつ尺度(SRQ-D)20点と抑うつ状態, neck disability index 31/50点と中等度生活動作障害を示した. WADに合併したwide spread painと診断し, トリプタノール20mg/日とノイロトロピン4錠/日を開始した. 投与約4週後には, 広範な痛みは軽減し右股関節痛に限局した. WADでの痛みの増強ではwide spread painの合併を考慮する必要がある. また, 痛みの範囲や性質, 強さ, 心理的評価および生活の質の調査は痛みの診療に有用であった.
ISSN:1340-4903