1―116制吐剤により抑うつ症状をきたしたと考えられた2症例

モルヒネによる嘔気, 嘔吐に対し制吐剤を投与したところ, 錐体外路症状とともに抑うつ症状を呈した2症例を経験した. 【症例1】47歳, 女性. 副咽頭間隙線維腫術後再発で, 再発腫瘍が中頭蓋窩に浸潤し, 左眼瞼下垂, 眼球運動障害, 眼窩痛を認めた. 【症例2】77歳, 女性. 原発不明癌の骨転移にて右上肢痛を認めた. 両症例ともモルヒネによる癌性疼痛(症例1は良性だが経過は悪性)治療中で, モルヒネによる嘔気, 嘔吐を合併したためメトクロプラミド, プロクロルペラジンを投与した. 疼痛管理も良好で, 嘔気, 嘔吐も消失したが, (症例1)は同室のターミナル患者の死を契機として, 病気の不治,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 9; no. 3; p. 257
Main Authors 行田泰明, 佐野博美, 田中清高, 横田美幸, 吉澤明孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2002
Online AccessGet full text
ISSN1340-4903

Cover

More Information
Summary:モルヒネによる嘔気, 嘔吐に対し制吐剤を投与したところ, 錐体外路症状とともに抑うつ症状を呈した2症例を経験した. 【症例1】47歳, 女性. 副咽頭間隙線維腫術後再発で, 再発腫瘍が中頭蓋窩に浸潤し, 左眼瞼下垂, 眼球運動障害, 眼窩痛を認めた. 【症例2】77歳, 女性. 原発不明癌の骨転移にて右上肢痛を認めた. 両症例ともモルヒネによる癌性疼痛(症例1は良性だが経過は悪性)治療中で, モルヒネによる嘔気, 嘔吐を合併したためメトクロプラミド, プロクロルペラジンを投与した. 疼痛管理も良好で, 嘔気, 嘔吐も消失したが, (症例1)は同室のターミナル患者の死を契機として, 病気の不治, 将来の不安を訴え, 程なくアカシジアを認めたため精神科コンサルトしたところ, 制吐剤による錐体外路症状ならびに抑うつ症状を示唆され, 制吐剤を中止した. (症例2)は不安, 焦燥感を訴えたため, (症例1)の経験より制吐剤を中止した. 両症例とも制吐剤中止により錐体外路症状ならびに抑うつ症状は軽快した. 緩和ケアーでは症状が多彩であり, またメンタルペインも重要な因子であるが, 内服治療が多岐にわたるため, 治療薬の副作用にも十分配慮する事が重要であると考えられた.
ISSN:1340-4903