変形性膝関節症に対する悪化因子の縦断的検討-関節可動域の変化と筋力の関係

【はじめに】変形性膝関節症(膝OA)に対する疫学調査の結果から, 股関節及び膝関節の可動域変化と膝伸展筋力の関連について縦断的検討を行ったので報告する. 【対象と方法】新潟県松代町の膝検診は1979年を初回とし, 以後7年ごと(1986年, 1993年, 2000年)に計4回実施された. 検診内容は, 整形外科医の問診, 視触診, 身体計測, 股, 膝関節可動域, 体脂肪率等の測定および立位膝前後X線撮影を実施した. 4回目の検診では, 膝伸展筋力を追加しアルケア社製QH-302で測定した. また, X線の膝OA病期評価は, Kellgrenの分類を参考にして5段階とした. 今回は, この検診...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 22
Main Authors 渡辺博史, 粟生田博子, 蕪木武史, 菅原治美, 濱辺政晴, 古賀良生, 大森豪, 遠藤和男, 田中正栄, 長崎浩爾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】変形性膝関節症(膝OA)に対する疫学調査の結果から, 股関節及び膝関節の可動域変化と膝伸展筋力の関連について縦断的検討を行ったので報告する. 【対象と方法】新潟県松代町の膝検診は1979年を初回とし, 以後7年ごと(1986年, 1993年, 2000年)に計4回実施された. 検診内容は, 整形外科医の問診, 視触診, 身体計測, 股, 膝関節可動域, 体脂肪率等の測定および立位膝前後X線撮影を実施した. 4回目の検診では, 膝伸展筋力を追加しアルケア社製QH-302で測定した. また, X線の膝OA病期評価は, Kellgrenの分類を参考にして5段階とした. 今回は, この検診をすべて受診した女性373名中, 初回検診時X線の膝OA病期評価でgradeが0, 1であった353名(平均年齢:70.4±5.5歳)を対象とし, 右膝について検討した. 対象を4回目のgradeが0, 1のまま変化がなかった群(不変群)とgradeが2以上に変化した群(悪化群)の2群に分け, 股関節内外旋可動域の中央値(中央値), 膝伸展可動域(伸展角度)について検討した. さらに初回の伸展角度を過伸展群と伸展0゜の正常群に分け, 可動域の変化と膝伸展筋力との関連について検討した. 統計学的処理はt-検定, およびX2検定を行い, 5%を有意水準とした. 【結果】中央値(外旋域を+とした)の初回と4回目の比較ついて, 不変群は3.3±6.1゜から5.7±5.7゜, 悪化群は3.5±5.7゜から6.2±6.0゜と共に有意な増加を認めた. 両群間の比較では有意差を認めなかった. 伸展角度については, 不変群1.2±2.9゜から0.1±3.0゜, 悪化群1.8±3.4゜から-2.3±5.2゜と共に有意な減少を認めた. 両群間の比較では, 悪化群が有意に低く屈曲拘縮を認めた. また4回目に拘縮に変化した割合について, 過伸展群は41.2%(85名中35名)で, 正常群の17.9%(268名中48名)に比べ有意に高かった. 筋力については, 過伸展群15.9±5.9kg, 正常群18.0±5.6kgで, 過伸展群が有意に低かった. 【考察とまとめ】我々は, 膝OAの悪化因子の横断的検討において, 膝OAの進行と股関節内旋可動域の低下が関連することを報告した. 今回も中央値が外旋方向に変化し同様の結果が得られた. しかし, 悪化群, 不変群の両群間に有意差はなく, 股関節の可動域は加齢による影響が大きいと考えられた. 膝屈曲拘縮は悪化群のみ認められ, 膝OAの悪化因子として示唆された. さらに屈曲拘縮の原因として若年時の膝の過伸展が示唆され, 高齢化に伴い筋力が低かった. 長期経過における膝の過伸展と膝伸展筋力の関連が膝OAの発生に影響を及ぼすのではないかと考えられた. そして, 膝伸展筋力の維持は重要で継続した運動療法の必要性を認識した. 今後は, 他の悪化因子との関連や股関節の筋力なども検討する.
ISSN:0289-3770