9 国内で初めて見いだされた回帰熱ボレリアの感染性に関する研究
ボレリア感染症には, ライム病と回帰熱が知られている. 北日本では主にIxodes persulcatusによって伝播されるライム病の存在が知られている. 一方, 全国的に回帰熱症例および回帰熱病原体ボレリア種はこれまで見いだされていない. 我々は, 1999年に軟ダニの一種Carios capensis刺咬後の熱性疾患1例が回帰熱であった可能性を血清学的に示してきたが, その病原体ボレリアについてはこれまで不明であった. そこで本研究では, 国内の鳥類を主な吸血源とするC. capensisおよびC. capensis近縁種であるCarios sawaiiについてボレリア保有調査を行い, C...
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Published in | Medical Entomology and Zoology Vol. 61; no. 2; p. 153 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本衛生動物学会
15.06.2010
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology |
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ISSN | 0424-7086 |
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Summary: | ボレリア感染症には, ライム病と回帰熱が知られている. 北日本では主にIxodes persulcatusによって伝播されるライム病の存在が知られている. 一方, 全国的に回帰熱症例および回帰熱病原体ボレリア種はこれまで見いだされていない. 我々は, 1999年に軟ダニの一種Carios capensis刺咬後の熱性疾患1例が回帰熱であった可能性を血清学的に示してきたが, その病原体ボレリアについてはこれまで不明であった. そこで本研究では, 国内の鳥類を主な吸血源とするC. capensisおよびC. capensis近縁種であるCarios sawaiiについてボレリア保有調査を行い, C. sawaiiから回帰熱ボレリアが見いだされたことから, 本ボレリアの遺伝学的分類とその病原性解析を試みた. 本ボレリアは, 宿主維持遺伝子の配列をもとにした系統解析から, 米国でマダニ媒介性回帰熱として知られているBorrelia turicataに近縁であること, また, C. sawaiiの中腸および唾液腺組織に本ボレリアが生着していることが明らかになった. 一方, 分離のためのマウス接種実験では, 被接種マウスの体温変動, 抗体価の上昇, 血液塗抹標本の観察, および接種マウス臓器からのボレリアDNA検出を試みたが, ボレリア感染を示す結果は得られなかった. 本ボレリアの病原性は不明であるが, 近年米国において, コウモリ寄生性のCarios属ダニより, 本ボレリアと近縁なボレリアが検出され, マウスを用いた感染実験によりその病原性が示されている. 今後はマウス種を変更する等により, さらに解析を進める予定である. 研究協力者:安藤秀二, 坂田明子, 狩野清貴, 佐藤文男, 仲村昇, 尾崎清明, 阿戸学, 渡辺絵理, 大橋典男 |
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ISSN: | 0424-7086 |