温泉気候物理医学のエビデンス

昭和初期に旧帝国大学に温泉治療学研究所が付置され, 温泉・温泉療法の研究が行われた. 50年を経た1980年代初頭には, 温泉成分には特異性がないことが明らかとなり, 温泉療法の疾患特異性も否定された. すなわち, 医科学の対象としての温泉・温泉療法の意義は否定されたことになる. その結果, 多くの付置研究所は廃止され, あるいは形を変えて今日に至っている. 不幸は, 医科学の対象としての研究終焉がまるでその存在すら無意味であるかのように誤解されたことである. それからほぼ4半世紀たった今日, その意義を再評価すべく本学会は努力を重ね, また, 世間も温泉の持つ健康獲得や回復効果への再評価を後...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 71; no. 1; p. 21
Main Authors 安田正之, 早坂信哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本温泉気候物理医学会 01.11.2007
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ISSN0029-0343

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Summary:昭和初期に旧帝国大学に温泉治療学研究所が付置され, 温泉・温泉療法の研究が行われた. 50年を経た1980年代初頭には, 温泉成分には特異性がないことが明らかとなり, 温泉療法の疾患特異性も否定された. すなわち, 医科学の対象としての温泉・温泉療法の意義は否定されたことになる. その結果, 多くの付置研究所は廃止され, あるいは形を変えて今日に至っている. 不幸は, 医科学の対象としての研究終焉がまるでその存在すら無意味であるかのように誤解されたことである. それからほぼ4半世紀たった今日, その意義を再評価すべく本学会は努力を重ね, また, 世間も温泉の持つ健康獲得や回復効果への再評価を後押しする状況にある. しかしながら, 以前と同じような手段でアプローチしてもおそらく得られる結論は似たものであろう. それを避けるには, 温泉の持つ作用のうち, 新たなアプローチが可能となった側面にスポットを当て, この間に新たに開発された免疫, 遺伝子技術などの手法により評価することが必要であろう.
ISSN:0029-0343