腸内フローラと腸内病原菌

腸内フローラは外来病原菌の腸内定着を阻止し, 腸内に定着している日和見感染菌の増殖を抑制して生体を微生物の攻撃から保護するためのバリヤー機能を持つ. また, 通常は腸内に定着して病原性を示さない菌が生体の生理機能の異常により腸内での異常増殖をともなって病原性を発揮するものもある. 腸内フローラによる病原菌の腸内定着ならびに増殖の抑制は古くから知られている腸内フローラの有用性の一つであるが, そのメカニズムについては依然不明な点が多く残されている. 腸内フローラの外来病原菌に対する拮抗作用は1)腸管内の栄養素の競合, 2)定着・増殖するための場(粘液層, 腸管上皮細胞)の競合, 3)腸内フローラ...

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Published in腸内細菌学雑誌 Vol. 22; no. 2; pp. 89 - 90
Main Author 伊藤喜久治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ビフィズス菌センター 01.04.2008
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ISSN1343-0882

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Summary:腸内フローラは外来病原菌の腸内定着を阻止し, 腸内に定着している日和見感染菌の増殖を抑制して生体を微生物の攻撃から保護するためのバリヤー機能を持つ. また, 通常は腸内に定着して病原性を示さない菌が生体の生理機能の異常により腸内での異常増殖をともなって病原性を発揮するものもある. 腸内フローラによる病原菌の腸内定着ならびに増殖の抑制は古くから知られている腸内フローラの有用性の一つであるが, そのメカニズムについては依然不明な点が多く残されている. 腸内フローラの外来病原菌に対する拮抗作用は1)腸管内の栄養素の競合, 2)定着・増殖するための場(粘液層, 腸管上皮細胞)の競合, 3)腸内フローラによるinhibitorの産生などがあげられる. 実際にはいくつかの要因の組み合わせにより拮抗作用が働く. 例えば, マウスのcitrobactor rodentiumの感染症はマウスの系統により感受性に差があり, これは腸管上皮細胞への付着性と上皮細胞の反応性の違いと考えられている. また, この感染症は腸内フローラにより感染を阻止したり, これとは逆に腸内フローラの存在が感染を増幅したりすることがある.
ISSN:1343-0882