歩行とエルゴメーター運動における筋活動の比較

【はじめに】我々は第20回日本私立医科大学理学療法学会において, エルゴメーター運動では種々の姿勢変化に関らず, ペダル周期に応じた一定の筋活動パターンを示すことを報告した. そこで今回は歩行獲得を目的とした練習の一手段として, エルゴメーターの有用性を検討するために, 歩行とエルゴメーター運動について, 筋の活動パターンという観点から比較, 検討したので報告する. 【方法】対象は年齢24~33歳の健常男性4名とした. 歩行は時速4kmのトレッドミルを, 各被検者の自由な歩調で歩行させた. エルゴメーター運動は, 三菱社製Strength Ergo240を用い, 負荷はアイソトニックモードで1...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 59
Main Authors 田中直次郎, 小林賢, 東海林淳一, 牛場潤一, 市川雅彦, 遠藤敏, 正門由久, 里宇明元, 千野直一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0289-3770

Cover

More Information
Summary:【はじめに】我々は第20回日本私立医科大学理学療法学会において, エルゴメーター運動では種々の姿勢変化に関らず, ペダル周期に応じた一定の筋活動パターンを示すことを報告した. そこで今回は歩行獲得を目的とした練習の一手段として, エルゴメーターの有用性を検討するために, 歩行とエルゴメーター運動について, 筋の活動パターンという観点から比較, 検討したので報告する. 【方法】対象は年齢24~33歳の健常男性4名とした. 歩行は時速4kmのトレッドミルを, 各被検者の自由な歩調で歩行させた. エルゴメーター運動は, 三菱社製Strength Ergo240を用い, 負荷はアイソトニックモードで10Nmとし, セミリカンベント肢位で運動させた. ペダル回転数を歩行と合わせるために, 各被検者の歩調をメトロノームで提示し, 回転数をあわせるよう指示した. これらの運動中に, 被検者の右下肢ヒラメ筋, 腓腹筋内, 外側頭, 前脛骨筋, 内, 外側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋から表面筋電図を記録した. また, 電気角度計を膝, 足関節に装着し, 関節角度も記録した. 筋電図はフットスイッチと膝関節角度を基点に整流, 正規化し, 50施行分を加算平均処理して, 筋活動パターンを比較, 検討した. 【結果】歩行, エルゴメーター運動とも, 全被検者に共通した周期的な筋活動パターンを認めた. 両者の類似点は, a)膝の伸筋群の活動に続いて下腿の伸筋群が活動し, 次に前脛骨筋が活動するという経時的な活動順序. b)下腿伸筋群と前脛骨筋の拮抗的な活動, などであった. 一方, 両者の相違点は, a)同じ筋群でも, 単関節筋と二関節筋の活動パターンが異なる. b)腓腹筋内外側頭の優位性が異なる(歩行では内側頭が, エルゴメーター運動では外側頭が優位であった). c)エルゴメーター運動で, 膝伸筋群の活動が大きく, 前脛骨筋の活動が小さくなる傾向を認める. d)エルゴメーター運動では各筋の筋活動パターンの変化がなだらかである, などであった. 【考察】歩行とエルゴメーター運動という周期性をもつ運動において, 活動する筋群の経時的な順序に類似性を認めたことから, 歩行の代用的な練習手段として, エルゴメーター運動は有効であると考えられた. しかし, 二関節筋や, 前脛骨筋などで活動パターンの相違があり, 経時的には類似な活動をしていても, 異なった神経調節がなされていると考えられ, 今後の検討が必要である.
ISSN:0289-3770