1. TAE後多発肺転移巣の消失した巨大肝癌の一例
【緒言】原発性肝癌の自然退縮はきわめてまれな現象で, これまでに国内外で26例の報告を認めるのみである. 今回我々は, 肝病変のTAE後に多発性肺転移巣の消失した巨大肝癌の1例を経験したので報告する. 【症例】77歳男性. 主訴;肝腫瘍の精査加療目的. 現病歴;30年ほど前全身倦怠感出現し近医を受診, 肝機能障害を認め, アルコール性肝障害と診断されフォローされていたが, 2004年C型肝炎と診断された. その後肝障害増悪したため2004年8月9日当科紹介受診. エコー上肝右葉S5に最大径43mm, S8に最大径80mmのSOL認めたため9月8日AG目的で入院. 既往歴;高血圧・前立腺肥大症....
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 4; p. 413 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.11.2005
Kitakanto Medical Society |
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ISSN | 1343-2826 |
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Summary: | 【緒言】原発性肝癌の自然退縮はきわめてまれな現象で, これまでに国内外で26例の報告を認めるのみである. 今回我々は, 肝病変のTAE後に多発性肺転移巣の消失した巨大肝癌の1例を経験したので報告する. 【症例】77歳男性. 主訴;肝腫瘍の精査加療目的. 現病歴;30年ほど前全身倦怠感出現し近医を受診, 肝機能障害を認め, アルコール性肝障害と診断されフォローされていたが, 2004年C型肝炎と診断された. その後肝障害増悪したため2004年8月9日当科紹介受診. エコー上肝右葉S5に最大径43mm, S8に最大径80mmのSOL認めたため9月8日AG目的で入院. 既往歴;高血圧・前立腺肥大症. 輸血歴;なし. 嗜好歴;アルコール:焼酎1杯・日本酒1合・ビール1缶, 喫煙;なし. 家族歴;特記すべきことなし. 入院時現症;意識清明, 黄疸なし. 腹部所見;右季肋部に硬い腫瘤を触知し, 体動にて疼痛あり. 浮腫なし, 手掌紅斑あり. 入院時検査所見;T-Bil 0.5, Alb 3.7, PT 72%で予備能の良好なC型肝炎. AFP 182500ng/ml, PIVKA 31600mAU/mlと異常高値. 【経過】初診時, CT上S5に径4cm, S8に径8cmのenhanceされる大きな腫瘤を認め, 胸部レントゲン・胸部CT上で多発性の腫瘤影あり. CeAGでは肝右葉に主座を置く巨大な腫瘤濃染像を認め, 多発肺転移を伴ったHCCと思われた. 明らかなA-VshuntやA-Pshuntは認められなかった. この病変に対してSMANCS 6mg動注後, ズポンゼルにてTAEを試行. 2004年11月の2回目のTAE施行後, 腫瘍マーカーは著明に減少し, 肺転移巣も縮小. その後強力ミノファーゲンCとウルソで経過観察. 2005年3月ごろより腫瘍マーカーは再度著明に増加し肝病変の増大を認めたため6月10日TAI施行したが, この時点でも胸部Xp, CT上肺転移巣は消失していた. 【考察】肺転移巣が消失した機序に関して, (1)抗癌剤の全身への影響としてエピルビシンに高感受性の腫瘍細胞のみが肺に転移していた可能性, (2)腫瘍免疫として原発巣治療により腫瘍免疫が賦活され転移巣の増殖を抑制した可能性, などが考えられたが, 詳細は不明である. 今後肺転移巣の出現につき注意深い観察が必要と思われた. |
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ISSN: | 1343-2826 |