日本衛生学会100年に向けての提言

私が, 金沢大学がん研究所薬理部教授より東京大学医学部衛生学教室教授に着任してから今年で10年が経ちます. すなわち, 日本衛生学会に入って10年目を迎えるわけです. この度, 日本衛生学会が75周年を迎える節目に, 日本衛生学会100年に向けて, という文章を執筆できることを大変嬉しく思います. 御存じのように, 日本における最初の衛生学教室は, 1985年緒方正規を教授(最初は講師)として東京大学に設置され, 私は8代目の教授となります. 緒方はミュンヘンのPettenkoferに師事し日本に最初の近代的細菌培養技術を導入し, 北里柴三郎にその技術を伝授しました. 北里はその後ベルリンのK...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 61; no. suppl; pp. 43 - 44
Main Author 松島綱治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生学会 15.03.2006
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ISSN0021-5082

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Summary:私が, 金沢大学がん研究所薬理部教授より東京大学医学部衛生学教室教授に着任してから今年で10年が経ちます. すなわち, 日本衛生学会に入って10年目を迎えるわけです. この度, 日本衛生学会が75周年を迎える節目に, 日本衛生学会100年に向けて, という文章を執筆できることを大変嬉しく思います. 御存じのように, 日本における最初の衛生学教室は, 1985年緒方正規を教授(最初は講師)として東京大学に設置され, 私は8代目の教授となります. 緒方はミュンヘンのPettenkoferに師事し日本に最初の近代的細菌培養技術を導入し, 北里柴三郎にその技術を伝授しました. 北里はその後ベルリンのKochのところに留学してBehringと破傷風抗毒素を用いた受動免疫の有効性を実証したわけです. 緒方は, 日本ではあまり, 高く評価されていないようですが, 台湾におけるペストの媒介動物がネズミであることを同定したことで, 世界的に有名です. (教室の記録には, 1904年に緒方が日本衛生学会を創設した, と書かれています)教室の2~6代目(横手千代之助, 田宮猛雄, 羽里彦左衛門, 豊川行平, 山本俊一)までは, その時代の最も重大な社会医学的課題として感染症を中心研究テーマとしました. 戦前は, 国崎定潤に象徴される共産主義の影響を強く受けた社会医学研究の先駆者を輩出する一方, 戦争中は731部隊のリケッチャ部隊に協力したり, また研究室で和製のペニシリン製造を行ったりもした複雑な歴史があります.
ISSN:0021-5082