宮城県での医療支援-「石巻圏合同救護チーム」としての救護活動

平成23年3月11日の東日本大震災により, 宮城県石巻市は市街地の半分が浸水し, 市内のほぼ半数の家屋が全壊するという甚大な被害を受けた. 当院は東北大学からの要請を受け, 4月4日から約1ヶ月間, 9チームの医療救護班を継続的に石巻市に派遣した. 医療救護班は医師2名, 看護師2名, 事務職員2名, 薬剤師0~1名で構成され, 食事, 宿泊, 移動手段, 医薬品・医療器材全てを自己完結できる体制で臨んだ. 活動拠点となった「石巻圏合同救護チーム」は, 石巻赤十字病院内に本部を置き, 宮城県の災害医療コーディネーターが統括責任者となり, 全国から参集した医療チームを一元的に統括していた. 東松...

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Published inJOURNAL OF UOEH Vol. 34; no. 1; p. 113
Main Author 相原啓二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 産業医科大学 01.03.2012
産業医科大学学会
The UOEH Association of Health Sciences
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ISSN0387-821X

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Summary:平成23年3月11日の東日本大震災により, 宮城県石巻市は市街地の半分が浸水し, 市内のほぼ半数の家屋が全壊するという甚大な被害を受けた. 当院は東北大学からの要請を受け, 4月4日から約1ヶ月間, 9チームの医療救護班を継続的に石巻市に派遣した. 医療救護班は医師2名, 看護師2名, 事務職員2名, 薬剤師0~1名で構成され, 食事, 宿泊, 移動手段, 医薬品・医療器材全てを自己完結できる体制で臨んだ. 活動拠点となった「石巻圏合同救護チーム」は, 石巻赤十字病院内に本部を置き, 宮城県の災害医療コーディネーターが統括責任者となり, 全国から参集した医療チームを一元的に統括していた. 東松島市と女川町を含む石巻市周辺を14の地域(エリア)に分け, 長期滞在できる医療チームを各エリアの調整役に指名, その下で3~4つの医療チーム(ライン)が避難所の巡回診療などを行う「エリア・ライン制」を導入していた. 産医大チームは沿岸部の渡波地区を担当し, 避難所の巡回診療や仮設診療所での外来診療を行った. かぜ, 胃腸炎, 頭痛, 便秘等のcommon diseaseの診療, 慢性疾患患者への投薬・処方, 被災現場での作業中のけがに対する処置といったプライマリ・ケアが主な診療内容であった. 診療と並行して医療・救護ニーズのサーベイランスも行った. 避難所毎に医療ニーズ, 衛生環境, ライフラインの復旧状況等を毎日調査し, 本部に報告した. その調査結果は, 避難所の生活・衛生環境の改善に向けた取り組みに反映された. ライフラインの復旧も進み, 被災した診療所の再開も始まった5月2日, 産医大チームの医療支援活動は終了した. 当時, 全国から多数の医療チームが現地入りしたが, 災害医療コーディネーターによる一元的な管理体制により, 効率的で継続的な医療救護活動が行われた. 今回の経験を通して, 発災後亜急性期の医療救護活動における指揮命令系統の体制整備の重要性を再認識した.
ISSN:0387-821X