脊髄損傷ラット麻痺骨格筋におけるミオシン軽鎖アイソフォーム及びトロポミオシンの経時的変化
【目的】我々は, 脊髄損傷に伴う二次的な骨格筋萎縮に関して, 筋収縮タンパクの変化を組織化学的に検討してきた. これまでに脊髄損傷後のラットヒラメ筋において, ミオシン重鎖アイソフォーム(Myosin Heavy Chain isoform:以下MHC)がslowからfastへと変化することを明らかとした. また, 脊髄損傷後のミオシン軽鎖アイソフォーム変化についての報告が乏しいことから, 今回二次元電気泳動を用いて, 筋収縮タンパクの要素であるミオシン軽鎖アイソフォーム(Myosin Light Chain isoform:以下MLC)及びトロポミオシン(tropomyosin:以下TM)の...
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Published in | 理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 280 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会 Japanese Physical Therapy Association (JPTA) |
Subjects | |
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 【目的】我々は, 脊髄損傷に伴う二次的な骨格筋萎縮に関して, 筋収縮タンパクの変化を組織化学的に検討してきた. これまでに脊髄損傷後のラットヒラメ筋において, ミオシン重鎖アイソフォーム(Myosin Heavy Chain isoform:以下MHC)がslowからfastへと変化することを明らかとした. また, 脊髄損傷後のミオシン軽鎖アイソフォーム変化についての報告が乏しいことから, 今回二次元電気泳動を用いて, 筋収縮タンパクの要素であるミオシン軽鎖アイソフォーム(Myosin Light Chain isoform:以下MLC)及びトロポミオシン(tropomyosin:以下TM)の変化を解析したのでここに報告する. 【対象と方法】Wistar系雄性ラット19匹(体重180±13.6g)を用い, 13匹を脊髄損傷群(spinal cord injury群:以下SCI), 6匹を対照群(control群:以下CON)とした. SCIは腹腔内にネンブタールを投与後, 麻酔下にてメスを用いTh4-9間で椎弓除去後, 露出した脊髄をメスで完全横断した. 術後1, 3, 5週で屠殺し, その後両側のヒラメ筋(以下SOL), 長趾伸筋(以下EDL)を摘出し筋湿重量の測定を行った. 筋を40倍のミオシン抽出液でホモジナイズ後, 一次元目の等電点電気泳動を実施した. その後, 二次元目にSDS-PAGEを行い, クーマジーブリリアントブルー(coomassie brilliant blue:CBB)でゲルを染色し, ミオシン軽鎖, トロポミオシンを同定, 定量化した. 統計学的処理として, 一元配置分散分析を実施した. 【結果】筋湿重量(mg/g)は, SOLで各週ともに有意に減少した(p<0.05)が, EDLでは有意差を認めなかった. またSOLでは, 術後1週でMLCアイソフォームの変化は認められなかったが, 週が経過するとともにミオシン軽鎖のslow typeは減少, fast typeは増加した. 一方, EDLでは有意差はなかった. 今回トロポミオシンに関しては, α-TM, β-TMという2種類のアイソフォームの比(α/β)の検討を行ったが, 両筋ともに有意差は認められなかった. 【考察】slow typeのMHCアイソフォーム(MHC Iアイソフォーム)には, slow typeのMLCアイソフォームのみが存在する. したがって, SOLでミオシン軽鎖のslow typeが著明な減少を示したのは, MHC Iアイソフォーム減少に伴う変化である. 一方, EDLは元来fast typeのMHCアイソフォームの占有率が高く, かつすべてのfast typeの発現が観察されることから, 変化の幅が小さく, 有意差が認められなかったと考えられる. また, トロポミオシンに関しては, β-TMは骨格筋のタイプI線維に, α-TMはタイプII線維に多く含まれていると報告されている. 今回のトロポミオシンの検討結果は, 筋萎縮に伴うhybrid fiberの出現が原因だと推察される. |
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ISSN: | 0289-3770 |