パネルディスカッションIII まとめ

「脳性麻痺」の定義としては, 昭和43年の厚生省研究班のものを尊重しつつ, 早期治療の対象となるようなグループにも触れた発表であった. 各演者の発表を要約する. 乳幼児期では, 早期診断についてはほほ確立された感がある. 早期訓練の目標として歩行を第一とすると, 1歳までに首がすわれば歩行の可能性が大きく, 訓練により歩行開始時期をある程度早めることができる. 肘立て位獲得が3歳以後であったものは, その後の発達も不良である. IQ20以下の例では, 身体的にも重度の障害に終わる. 脳性麻痺児の2/3は, てんかんのコントロールなど何らかの小児科的管理を必要としており, 脳性麻痺のリハにおいて...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 26; no. 2; p. 87
Main Author 陣内一保
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.03.1989
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:「脳性麻痺」の定義としては, 昭和43年の厚生省研究班のものを尊重しつつ, 早期治療の対象となるようなグループにも触れた発表であった. 各演者の発表を要約する. 乳幼児期では, 早期診断についてはほほ確立された感がある. 早期訓練の目標として歩行を第一とすると, 1歳までに首がすわれば歩行の可能性が大きく, 訓練により歩行開始時期をある程度早めることができる. 肘立て位獲得が3歳以後であったものは, その後の発達も不良である. IQ20以下の例では, 身体的にも重度の障害に終わる. 脳性麻痺児の2/3は, てんかんのコントロールなど何らかの小児科的管理を必要としており, 脳性麻痺のリハにおいて小児科医の果たす役割は大きい. 系統的な訓練(PT, OT)は就学を境に終了することも多いが, 決してこの時点が限界ではなく, 終了というより変更である. 就学後も, ADL面では半数以上の例に改善がみられ, そのピークは14-15歳である. 逆に管理不十分で変形 拘縮を生じ, 障害をより重度化している例もある. 病型別では, アテトーゼ型の自立度が低い. impairmentに関しては限界であっても, disability, handicapについては改善の余地があり, 特に学童期の脳性麻痺児に対し, 移動, 補装具, 食事などの面でリハ医の関与が必要である. 母親の障害に対する理解度が限界を左右する. 十分説明を行いつつ治療をすすめ, 治療について, 母親, 治療者双方の満足感を大切にしたい. 脳性麻痺のリハは, あくまでチームアプローチが基本である. 脳性麻痺の個々の治療に限界があることはやむを得ないが, それを克服または回避しつつ前進し, 脳性麻痺児の全人的療育に努めるべきである. 言い換えれば, チームにとって「限界」はなく, また作ってはならない.
ISSN:0034-351X