圧バイオフィードバック装置による腹横筋の機能評価

【背景】近年, 従来の腹直筋, 外腹斜筋, 内腹斜筋などのグローバル筋群へのアプローチに加え, ローカル筋群に注目した脊椎の分節的安定性のためのアプローチが注目されている. 取分け, ローカル筋群に分類される腹横筋は, 脊椎の安定化に重要な役割を果たすことが指摘されている. 臨床上, 腹横筋の機能を把握することが重要であるが, 視診により深部に位置する腹横筋収縮を観察することができず, また, 腹横筋は骨運動に関与していないため, 従来のような徒手筋力検査法を用いて評価することはできない. 研究室レベルでは, ワイヤー電極を用いた筋電図によって, 腹横筋収縮を記録する侵襲的方法が行われているが...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 187
Main Authors 樋口善英, 齋藤昭彦, 新井正一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
Subjects
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ISSN0289-3770

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Summary:【背景】近年, 従来の腹直筋, 外腹斜筋, 内腹斜筋などのグローバル筋群へのアプローチに加え, ローカル筋群に注目した脊椎の分節的安定性のためのアプローチが注目されている. 取分け, ローカル筋群に分類される腹横筋は, 脊椎の安定化に重要な役割を果たすことが指摘されている. 臨床上, 腹横筋の機能を把握することが重要であるが, 視診により深部に位置する腹横筋収縮を観察することができず, また, 腹横筋は骨運動に関与していないため, 従来のような徒手筋力検査法を用いて評価することはできない. 研究室レベルでは, ワイヤー電極を用いた筋電図によって, 腹横筋収縮を記録する侵襲的方法が行われているが, 非侵襲的な臨床的評価は確立されていない. 【目的】本研究では, 超音波診断装置と圧バイオフィードバック装置を用いて, 腹横筋機能評価を試み, 臨床応用するための基礎的知見を得ることを目的とした. 【対象】健常成人22名〔平均年齢:23.1歳(19-34歳), 平均身長:169.6±6.2cm, 平均体重:62.3±8.4kg〕を対象とし, 研究の主旨と方法に関しての説明を十分に行ったあと, 被験者の承諾を得て実施した. 【方法】腹臥位にて, 口頭指示に対して腹横筋を選択的に収縮させるように努力したとき(腹部引き込み作用時)の腹壁の変化を圧バイオフィードバック装置(Chattanooga group, inc, USA)を用いて記録した. 圧パッドの遠位端は左右の上前腸骨棘を結ぶ線上に位置するようにして腹部と診療台の間挿入し. その後, 圧パッドを70mmHgに加圧し, 腹壁の変化を検知できるようにした. 同時に, 被験者の腹部引き込み作用時の変化を超音波診断装置(東芝社製SSA-220A)によりイメージングし, デジタルビデオに記録した. 超音波診断装置のプローブ(3.75MHz)の位置は, 腹直筋外側縁より外側, かつ胸郭下縁と腸骨稜の間の部分で, 外腹斜筋, 内腹斜筋, 腹横筋の三層構造が記録できる位置とした. 【分析】超音波画像上で腹横筋の選択収縮のスキルを確認し, 選択収縮が得られた群と得られなかった群に分類した. 両群における圧変化の比較にはMann-Whitney U-testを用いて危険率5%で統計的有意差を検定した. 【結果】腹横筋の選択的収縮が得られた群と得られなかった群の圧変化はそれぞれ-4.2±2.0mmHg(n=10), 0.1±3.2mmHg(n=12)であり, 両群間に統計的有意差を認めた. 【考察】今回の結果から圧変化によって腹横筋の機能を推定することが可能であることが示された. しかし, 外腹斜筋などのグローバル筋群による代償運動により圧変化がみられる可能性があり, 代償運動をチェックするスキルに加えて, 腹横筋の選択収縮を確認するために超音波画像を併用することが有用である.
ISSN:0289-3770