21.先天性多発性関節拘縮症児の移動動作

上下肢の3大関節のうち4ヵ所以上に筋の発育不全を伴う関節拘縮を有するいわゆる先天性多発性関節拘縮症児14例を対象に, 移種動作について検討した. そのうち12例が生後6ヵ月までに初診しており, 調査時年齢は2歳5ヵ月から14歳2ヵ月(平均7歳2ヵ月), 観察期間は平均6年10ヵ月であった. 罹患肢は上肢のみのものはなく, 下肢のみ3例, 上下肢にまたがるもの11例であった. 下肢のうち, 股, 膝関節は11例に, 足部は14例全例に変形がみられ, 内反尖足が9例18足と最も高頻度であった. 手術的療法は10例に延30回行ったが, 手術の時期としては運動療法に最も支障となる膝関節脱臼, 過伸展を...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 21; no. 5; pp. 326 - 327
Main Authors 陣内一保, 櫛田和義, 亀下喜久男, 伊藤誠一, 井沢淑郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1984
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:上下肢の3大関節のうち4ヵ所以上に筋の発育不全を伴う関節拘縮を有するいわゆる先天性多発性関節拘縮症児14例を対象に, 移種動作について検討した. そのうち12例が生後6ヵ月までに初診しており, 調査時年齢は2歳5ヵ月から14歳2ヵ月(平均7歳2ヵ月), 観察期間は平均6年10ヵ月であった. 罹患肢は上肢のみのものはなく, 下肢のみ3例, 上下肢にまたがるもの11例であった. 下肢のうち, 股, 膝関節は11例に, 足部は14例全例に変形がみられ, 内反尖足が9例18足と最も高頻度であった. 手術的療法は10例に延30回行ったが, 手術の時期としては運動療法に最も支障となる膝関節脱臼, 過伸展をまず処置し, 保存的に矯正できない膝屈曲拘縮に対し1歳台に後方解離術, 次いで歩行開始までに足部をPlantigradeにするための手術(後内側解離, 距骨摘出)を行うことが歩行能力獲得に有意義であった. 調査時にはCommunity ambulator 6例, Household ambulator4例の計10例が実用歩行可能であったが, 後者はいずれも短下肢装具を必要とし, 2例は膝装具, 1例は両松葉杖を併用していた. 他の4例はNon-ambulatorで車いす, ねがえりなどにより移動していた. 本症児は, 筋力低下や精神発達遅滞などの合併がなければ, およそ3歳までに実用歩行が期待できる. 歩行能力の獲得には, 手術的療法を活用して支持性のよい膝にplantigradeの足を確保することが必要な条件である. 質問 北大 門司順一:初診断にAmbulationの予後については, 何を根拠にどういう説明を親になさっているのか御教え下さい. 答 陣内一保:新生児期の変形が高度であるのに比し, 本症の歩行に関する予後は良好である. しかし中枢神経症状のあるもの, 呼吸, 哺乳の障害のある児の場合は, 両親に楽観的な説明は避けている. 質問 金沢大 野村忠雄:股, 膝, 足変形を同時合併している症例に対して, どこから治療を開始していけばよいか. 答 陣内一保:股関節に対する手術経験は解離術1例のみであるが, 膝と足部についての手術順位は, 膝を優先している.
ISSN:0034-351X