「循環器病と酸化ストレス」-司会のことば
人類は, 酸素を効率よく利用することによって現在の繁栄を築いたといえます. 酸化ストレスは, この過程において克服されなければならなかった最大の問題でありました. 超高齢化社会を迎えて「健康の質」が問われる現代において, 酸化ストレスは, 我々に新たな命題を提起しているといえます. 「二十一世紀における循環器病予防」を考える本学会において, シンポジウムのテーマのひとつとして「循環器病と酸化ストレス」をとりあげていただけたのは, まさに時機を捉えた事と考えます. 生体における活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)の産生系と消去系の不均衡によってもたらされる酸化スト...
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Published in | 日本循環器病予防学会誌 Vol. 39; no. 2; p. 91 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本循環器管理研究協議会
30.04.2004
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1346-6267 |
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Summary: | 人類は, 酸素を効率よく利用することによって現在の繁栄を築いたといえます. 酸化ストレスは, この過程において克服されなければならなかった最大の問題でありました. 超高齢化社会を迎えて「健康の質」が問われる現代において, 酸化ストレスは, 我々に新たな命題を提起しているといえます. 「二十一世紀における循環器病予防」を考える本学会において, シンポジウムのテーマのひとつとして「循環器病と酸化ストレス」をとりあげていただけたのは, まさに時機を捉えた事と考えます. 生体における活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)の産生系と消去系の不均衡によってもたらされる酸化ストレスは, すべての生活習慣病の背景に存在し, 合併する心血管疾患の発症, 進展過程に重要な役割を担うことが明らかにされつつあります. 病因および病態修飾因子としての酸化ストレスの関わりとその機序を理解することは, 心血管病の予防と克服における根源的な解決策をもたらす糸口になるものと期待されます. 本シンポジウムは, 高血圧, 動脈硬化, 虚血性心疾患, 脳卒中の各病態における酸化ストレスの関与を, それぞれの分野で先端的研究を進めておられる各先生方に解き明かしていただきながらその予防と治療を考え, 様々な抗酸化物質の循環器病に対する予防的な役割についても理解を深めたいと考え企画致しました. はじめに安東先生には, 高血圧ないし高血圧に伴う血管障害の進展に深く関与するレニンアンジオテンシン系およびインスリン抵抗性の形成における酸化ストレスの関与を中心に, アドレノメデュリンの抗酸化作用についても解説していただきます. つづいて川嶋先生には, 血管におけるROS産生の主要な酵素であるNADPH oxidaseと内皮防御因子であるNOの二面性を中心に血管内皮障害, 動脈硬化における酸化ストレスの関与を解説していただきます. 筒井先生には, ミトコンドリア電子伝達系に由来するROS産生の機序を中心に, 虚血性心不全における酸化ストレスの役割と新たな心不全治療の可能性について解説していただきます. 相澤先生には, 現在「抗酸化薬」として唯一臨床用途の確立している治療薬であるエダラボンの作用を中心に, 脳卒中における酸化ストレスの関与と治療における酸化ストレス修飾の意義を解説していただきます. 最後にこれら循環器病の各病態を踏まえながら, 板倉先生には, 現在我々が手にし得る抗酸化物質による循環器病予防の可能性と限界について解説していただきます. 本シンポジウムを通じて, 酸化ストレスに対する理解が深まり, 循環器病の予防に更なる前進がもたらされることを期待するものであります. |
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ISSN: | 1346-6267 |