A-11.歯肉炎の場合の深部歯周組織の炎症性変化に関する病理組織学的研究

歯頸部に沈着するプラークによって惹起される歯周組1織の炎症は, 炎症の広がりと, 組織の炎症性破壊, 特にポケットの深さおよび歯槽骨縁の吸収性退縮の有無によって, 歯肉炎と(辺縁性)歯周炎とに分けられている. 一般的には, 歯肉炎が進展すると歯周炎に発展すると考えられている. しかしながら, 歯肉炎から歯周炎への進展過程における組織学的変化についてはまだ解明されていない点が残されている. 今回は比較的若い成人23体の剖検例からえた歯周組織の183歯周側(唇側, 舌側, 頬側, 口蓋側, 近心側, 遠心側)における歯肉炎の場合の深部歯周組織, すなわち, 歯根膜と歯槽骨への炎症性変化の波及状態を...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 26; no. 3; pp. 596 - 597
Main Author 秋吉正豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 28.09.1984
特定非営利活動法人日本歯周病学会
The Japanese Society of Periodontology
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ISSN0385-0110

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Summary:歯頸部に沈着するプラークによって惹起される歯周組1織の炎症は, 炎症の広がりと, 組織の炎症性破壊, 特にポケットの深さおよび歯槽骨縁の吸収性退縮の有無によって, 歯肉炎と(辺縁性)歯周炎とに分けられている. 一般的には, 歯肉炎が進展すると歯周炎に発展すると考えられている. しかしながら, 歯肉炎から歯周炎への進展過程における組織学的変化についてはまだ解明されていない点が残されている. 今回は比較的若い成人23体の剖検例からえた歯周組織の183歯周側(唇側, 舌側, 頬側, 口蓋側, 近心側, 遠心側)における歯肉炎の場合の深部歯周組織, すなわち, 歯根膜と歯槽骨への炎症性変化の波及状態を組織学的に検索した. 歯肉炎の判定基準は, ポケットは0~2mm, 炎症性細胞浸潤は主として歯肉縁またはポケット壁の固有層内に限局していて, 歯槽骨縁に明らかな吸収性退縮がないものとした. 結果および考察. 1)歯肉には, 183例全部に, 形質細胞, リンパ球を主体とする炎症性細胞浸潤がみられた. 程度は, 小範囲64例(35%), 中等度の広がり79例(43%), 広範囲のもの40例(22%)であった. 2)歯肉上または歯肉下プラークの沈着は, 作成時に剥離した10例以外の173例全部にみられた. その程度は少量, 中等量, 大量であった. 3)歯根膜への炎症性変化の波及は177例(97%)にみられたが, みられないものも6例(3%)あった. 4)歯根膜の炎症性変化は血管周囲性水症で, 同時に血管周囲性の歯根膜線維の消失をともなっていた(143例, 81%), 水症部に形質細胞などの浸潤のあるものは34例(19%)であった. 5)歯槽骨縁の吸収性退縮は89%(163例)ではなかったが, 軽度の吸収のあとを示したものは16例(9%)あった. 後者は修復されているものが多かった. 歯槽骨の垂直性吸収は5例(2%)にみられた. 部位は槽間中隔または口蓋側であった. 6)このような深部歯周組織における炎症性変化は歯肉から歯根膜に走っている血管に沿って血管周囲性に波及したもので, 歯根膜における静脈系小血管壁に周囲性に作用する化学的伸介物質の関与が示唆される. 〔質問〕(広大歯)二階宏昌 歯根膜に炎症の波及した場合, perivascularにみられる浸潤細胞が専ら形質細胞であるということだが, 初期変化としてはむしろリンパ球が出現しないものか. もし形質細胞しか見られないとしたら, その所見をどのように解釈できるのか. 〔解答〕(化研病理)秋吉正豊 今回の観察では, 歯根膜内の血管周囲性の細胞浸潤は軽い場合でも形質細胞を主体とするものであった.
ISSN:0385-0110