ハンセン病とぶどう膜炎

ハンセン病に併発するぶどう膜炎の全体像を把握するために, 過去の病歴とぶどう膜炎との経時的相関について検討し, 発症機序を推察する. 国立療養所多磨全生園と同栗生楽泉園で, ハンセン病とぶどう膜炎の経過を追跡できた症例について, 細菌学的検査結果とぶどう膜炎との相関, および治療歴との関連について検討する. ハンセン病に由来する虹彩炎は, 菌検査陽性の活動期に発症するもの, 菌検査が陰性化するころに発症するもの, 細菌学的な鎮静状態が数年から10年以上経過後に発症するもの等に分けられる傾向が見られ, これらは, 本疾患に併発するぶどう膜炎の病態が一様ではないことを示すと考えられる. またLLの...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 70; no. 2; p. 96
Main Authors 並里まさ子, 木田淳子, 小川秀興
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 10.07.2001
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ISSN1342-3681

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Summary:ハンセン病に併発するぶどう膜炎の全体像を把握するために, 過去の病歴とぶどう膜炎との経時的相関について検討し, 発症機序を推察する. 国立療養所多磨全生園と同栗生楽泉園で, ハンセン病とぶどう膜炎の経過を追跡できた症例について, 細菌学的検査結果とぶどう膜炎との相関, および治療歴との関連について検討する. ハンセン病に由来する虹彩炎は, 菌検査陽性の活動期に発症するもの, 菌検査が陰性化するころに発症するもの, 細菌学的な鎮静状態が数年から10年以上経過後に発症するもの等に分けられる傾向が見られ, これらは, 本疾患に併発するぶどう膜炎の病態が一様ではないことを示すと考えられる. またLLのsubpolarで菌検査陽性期間が長い場合のぶどう膜炎は, 長期間持続し, 重度となる傾向が見られる. 古くからハンセン病に併発するぶどう膜炎はII型らい反応で説明されていたが, 実際には同変化のみでは説明できない症例がしばしば見られることもよく知られている. 今回菌指数の変化等とぶどう膜炎の発症時期を検討した結果, II型らい反応に伴うと考えられるもの, I型らい反応の時期にほぼ一致して見られるもの, さらに両反応との直接的な関連以外に何らかの免疫応答等が推察されるものとに分けられる傾向が見られた. 以前我々は, 長期寛解例の約20%にぶどう膜炎を認め, これらの多くはLLとBLであることを報告した1, 2). また過去の活動期の治療が不充分と考えられる群ではぶどう膜炎の頻度が有意に高く3), 虹彩真珠は, ぶどう膜炎を有する群の多数に見られたが, ぶどう膜炎を有しない群には見られなかった1-3). さらにBLのぶどう膜炎を有する群では, らい菌特異的(PGL-I)および抗酸菌特異的(LAM-B)抗体が, ぶどう膜炎を有しない群より有意に高かった1, 2). これらは今回の報告の一部を裏付けるものと考えられ, 特に菌検査陰性化後にも残存する多様な抗原が, 境界反応や長期寛解後の自己免疫機序を疑わせる虹彩炎に関与している可能性が考えられた. 文献:1)並里まさ子他, ハンセン病既往者におけるぶどう膜炎, 臨床眼科51, 607-610(1997)2)M. Namisato et al, Uveitis in lepmsypatients who got inactive condition in preWHO/MDTera, LeprRev69-1, 82-86(1998)3)並里まさ子他, 長期菌検査陰性らい患者のぶどう膜炎, 日本らい学会誌, 64, 230-234(1995)
ISSN:1342-3681