脳卒中片麻痺患者における足底接地の有無が膝関節の角度認識に及ぼす影響

【目的】固有感覚は抗重力位での関節安定性や運動制御に重要な役割を果たしている. 脳卒中片麻痺患者では, 感覚障害が関節の不安定性を引き起こす一要因となり, 様々な身体活動に悪影響を及ぼすことが報告されている. 臨床において感覚障害のある脳卒中片麻痺患者の治療は荷重位の方が関節安定性を得やすいことを経験する. そこで, 動作制御に問題の多い膝関節の関節位置覚を足底接地時と非接地時で量的に比較し, 足底の触覚との関係を調べた. 【方法】対象は当院に入院している脳卒中片麻痺患者15名である(男性13名, 女性2名, 平均年齢56.6歳). 発症からの平均期間は4.1ヶ月で, 下肢Brunnstrom...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 200
Main Authors 木下めぐみ, 沖西正圭, 隅田祥子, 小林梨沙, 浦辺幸夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【目的】固有感覚は抗重力位での関節安定性や運動制御に重要な役割を果たしている. 脳卒中片麻痺患者では, 感覚障害が関節の不安定性を引き起こす一要因となり, 様々な身体活動に悪影響を及ぼすことが報告されている. 臨床において感覚障害のある脳卒中片麻痺患者の治療は荷重位の方が関節安定性を得やすいことを経験する. そこで, 動作制御に問題の多い膝関節の関節位置覚を足底接地時と非接地時で量的に比較し, 足底の触覚との関係を調べた. 【方法】対象は当院に入院している脳卒中片麻痺患者15名である(男性13名, 女性2名, 平均年齢56.6歳). 発症からの平均期間は4.1ヶ月で, 下肢Brunnstrom StageはIII4名, IV3名, V6名, VI2名, 歩行レベルは屋外自立5名, 屋内自立5名, 介助歩行5名であった. 痴呆, 高次脳機能障害のある者は除外した. 測定1は, 目隠しをし, 端座位にてスライディングボード上に裸足で足底接地し, 膝屈曲90゜位から他動的な膝伸展にて膝屈曲75゜の角度を認識してもらう. その後, 他動的な膝伸展にて角度を再現させ誤差角度を測定した(以下S-CKC75). 麻痺側, 非麻痺側ともに5回連続して行い, 各平均誤差角度を求めた. 同様に膝屈曲60゜でも行った(以下S-CKC60). 測定2は, 足底離地した座位をとり, air splintを使用して測定1と同様に膝屈曲75゜, 60゜で各平均誤差角度を求めた(以下OKC75, OKC60). 足底の触覚は, 3種類の太さのナイロン糸(0.2mm, 0.3mm, 0.4mm)を用いて3段階で評価した. 麻痺側/非麻痺側, S-CKC/OKC, 75゜/60゜の各条件を組み合わせた8通りの平均誤差角度について(1)麻痺側と非麻痺側での比較, (2)S-CKCとOKCでの比較, (3)75゜と60゜での比較を行った. 更に(4)麻痺側の触覚成績と麻痺側S-CKC75, S-CKC60の各平均誤差角度との関係について検討した. 【結果と考察】(1)各条件とも麻痺側と非麻痺側の誤差角度は50゜以下で有意差は認められなかった. (2)麻痺側のS-CKC60(平均誤差3.31. )とOKC60(5.03゜)の間, 及び非麻痺側のS-CKC60(2.79゜)とOKC60(4.79゜)の間で有意にS-CKCの方が誤差が少なかった(P<0.05). (3)屈曲角度の違いで誤差角度に有意差は認められなかった. (4)触覚の成績と麻痺側S-CKCの誤差角度の関係に有意な相関は認められなかった. 今回の結果から, 足底接地にて膝伸展角度が大きくなるほど足関節や足底等からの情報入力の重要性が推測された. また, 麻痺側の膝関節位置覚は比較的保たれていたことから, これまで感覚障害が脳卒中片麻痺患者の身体活動に悪影響を及ぼすと言われてきたが, 感覚障害以外の要因が大きい可能性が示唆され, 信頼性のある感覚障害の評価法も含めて, 今後吟味する必要があると考えられた.
ISSN:0289-3770