5.喉頭温存できた低位頚部進行食道癌の1切除例
【はじめに】頚部食道癌手術では, 喉頭に癌の直接浸潤がなくとも切除断端の安全域を確保, あるいは術後の誤嚥などの機能障害を避けるため喉頭を全摘することが一般的である. しかし, 癌腫の上縁の診断を明確にし, 反回神経を確実に温存することにより患者のQOL維持に有用な喉頭温存術式が可能なこともある. 今回我々は低位頚部進行食道癌に対し喉頭温存頚部上部胸部食道切除術, D2郭清, 遊離空腸再建術を施行し, 良好な経過を辿っている症例を経験したため, 若干の文献的考察を加えて報告する. 【症例】70歳男性. 【現病歴】平成15年10月中旬より嚥下困難を自覚し, 当院内科の精査で, 上切歯列より20c...
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| Published in | 山口医学 Vol. 53; no. 6; p. 343 |
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| Main Authors | , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
山口大学医学会
31.12.2004
Yamaguchi University Medical Association |
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| ISSN | 0513-1731 |
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| Summary: | 【はじめに】頚部食道癌手術では, 喉頭に癌の直接浸潤がなくとも切除断端の安全域を確保, あるいは術後の誤嚥などの機能障害を避けるため喉頭を全摘することが一般的である. しかし, 癌腫の上縁の診断を明確にし, 反回神経を確実に温存することにより患者のQOL維持に有用な喉頭温存術式が可能なこともある. 今回我々は低位頚部進行食道癌に対し喉頭温存頚部上部胸部食道切除術, D2郭清, 遊離空腸再建術を施行し, 良好な経過を辿っている症例を経験したため, 若干の文献的考察を加えて報告する. 【症例】70歳男性. 【現病歴】平成15年10月中旬より嚥下困難を自覚し, 当院内科の精査で, 上切歯列より20cmの部位に狭窄を指摘され, 生検により扁平上皮癌と判明し, 手術目的で当科入院となった. 【手術】食道透視などから低位頚部進行食道癌と診断し, 平成15年11月25日, 喉頭温存, 頚部 上部胸部食道切除術, D2郭清, 遊離空腸再建術, 気管切開術を行った. 喉頭は温存し, 右反回神経は転移リンパ節の浸潤があったため合併切除, 左鎖骨下神経を用いた神経移植術を行った. 左反回神経を気管と共にtapingし, 極力神経を触らないよう工夫し神経損傷を予防した. 遊離空腸再建の際は左上甲状腺静脈, 左頚横動脈を再建に利用した. 【病理診断】中分化扁平上皮癌, pT4, pPM(moderate dysplasia), pDM(-), pEM(+), ly3, v2, infβ, ie(-), nl(+), 右反回神経周囲にmetastasis(+)【術後経過】術翌日, Pgco2の上昇のため再建部の血流障害を疑い再開頚を行うも, 血流障害は認めなかった. 人工呼吸器より第8病日離脱し, 術後第16病日より半固形食の摂取を開始した. 術後第20病日に気管カニューレを抜去した. 現在右声帯は副正中位に固定あるも, 食事は全粥を全量摂取できており, 嚥下障害もなく, 頚部放射線療法施行中である. |
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| ISSN: | 0513-1731 |