3.先端放射線治療;重粒子線治療

重粒子線治療はX線やγ線を用いた従来の放射線治療と比較していくつかの点で非常に優れていることが放射線医学総合研究所の炭素線を用いた基礎的および臨床的研究から明らかにされつつある. 本シンポジウムでは, その物理学的および生物学的背景と臨床的有用性の概要についてまとめてみた. 重粒子線の特徴のひとつは, 良好な空間的線量分布である. ブラッグピークによって非常にシャープな線量分布が可能になり, 腫瘍のみを治療して, 周囲の正常組織の障害を軽減することが可能になる. 最近では, X線やγ線でも, 定位放射線照射やIMRT(強度変調放射線治療)等によって比較的良好な線量分布が可能になってきたが, 深...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 53; no. 3; p. 358
Main Author 長谷川正俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.08.2003
Kitakanto Medical Society
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ISSN1343-2826

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Summary:重粒子線治療はX線やγ線を用いた従来の放射線治療と比較していくつかの点で非常に優れていることが放射線医学総合研究所の炭素線を用いた基礎的および臨床的研究から明らかにされつつある. 本シンポジウムでは, その物理学的および生物学的背景と臨床的有用性の概要についてまとめてみた. 重粒子線の特徴のひとつは, 良好な空間的線量分布である. ブラッグピークによって非常にシャープな線量分布が可能になり, 腫瘍のみを治療して, 周囲の正常組織の障害を軽減することが可能になる. 最近では, X線やγ線でも, 定位放射線照射やIMRT(強度変調放射線治療)等によって比較的良好な線量分布が可能になってきたが, 深部の分布は重粒子線の方がよりシャープである. もうひとつの重要な特徴は, 高い生物学的効果比(RBE)である. X線γ線を1とすると, 重粒子線では2~3になり, 物理学的に同じ線量でも腫瘍に対する生物効果は2~3倍になる. ただし, 放射線感受性の正常組織ではRBEが相対的に小さいことも示唆されている. さらに, 放射線抵抗性に影響する細胞周期, 低酸素状態p53変異等の如何を問わずに同様な生物効果を示す場合が多いので, 特に放射線抵抗性の難治性腫瘍に対する有効性が示唆されている. 実際の臨床でも, 放射線抵抗性腫瘍に対して, 従来の放射線と比較して非常に良好な治療成績が報告されている. 特に従来の放射線では制御困難であった悪性黒色腫, 腺様嚢胞癌, 骨肉腫等において高率な局所制御が報告されている. 肺癌, 肝細胞癌, 前立腺癌, その他の腫瘍でも, 病期によっては従来の放射線や手術と同等以上の成績が報告されている. しかも重粒子線では, 手術のような侵襲がなく, 従来の放射線よりも少ない回数で治療が可能であり, QOLを優先した"切らずになおす癌治療"といえる.
ISSN:1343-2826