ハムストリング腱を用いた前十字靱帯再建時の疼痛管理方法の違いが術後3カ月の膝伸展筋力に与える影響

〔要旨〕(はじめに)前十字靱帯(ACL)再建術後には中等度以上の疼痛が生じ, 患者満足度や臨床成績の低下の一因となり得る. そのため, 神経ブロックなどを用いて術後疼痛を制御することが試みられている. しかし近年, 大腿神経ブロック(FNB)が, 術後の安全なスポーツ復帰に重要とされる膝伸展筋力を低下させる可能性が報告された. 本研究の目的は, ハムストリング腱を用いたACL再建術後の疼痛管理にFNB・内転筋管ブロック(ACB)・関節周囲多剤カクテル注射(PMDI)を用いた場合で術後3カ月の膝伸展筋力に差が生じるかを検討することである. (対象と方法)ハムストリング腱を用いた初回ACL再建術を...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 32; no. 2; pp. 295 - 302
Main Authors 水野雄伸, 中瀬順介, 仙石拓也, 金山智之, 石田善浩, 梁取祐介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 30.04.2024
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕(はじめに)前十字靱帯(ACL)再建術後には中等度以上の疼痛が生じ, 患者満足度や臨床成績の低下の一因となり得る. そのため, 神経ブロックなどを用いて術後疼痛を制御することが試みられている. しかし近年, 大腿神経ブロック(FNB)が, 術後の安全なスポーツ復帰に重要とされる膝伸展筋力を低下させる可能性が報告された. 本研究の目的は, ハムストリング腱を用いたACL再建術後の疼痛管理にFNB・内転筋管ブロック(ACB)・関節周囲多剤カクテル注射(PMDI)を用いた場合で術後3カ月の膝伸展筋力に差が生じるかを検討することである. (対象と方法)ハムストリング腱を用いた初回ACL再建術を施行された患者132名を対象とし, 時期ごとで区分けした術中の疼痛管理方法によってFNB群(66名)・ACB群(38名)・PMDI群(28名)に群分けした. 術後3カ月時点の患側膝伸展筋力のピークトルク・膝伸展筋力ピークトルクの健患比(LSI)・患側膝伸展筋力ピークトルクの体重比(BWR)を60°/sec・180°/secで評価した. (結果)3群間の患者背景に有意差はなく, 術後3カ月時点における患側膝伸展筋力のピークトルク・LSI・BWRのいずれの条件においても群間で差を認めなかった. (結論)ハムストリング腱を用いたACL再建術時にFNB・ACB・PMDIを用いた場合, 術後3カ月の膝伸展筋力に差は生じないことが示唆された.
ISSN:1346-4159